コロナ禍での困窮者へ食料支援 ジーザス・コミュニティ国分寺

支援物資には食料だけでなく各家庭の必要に応じた物を送ることも。週に2、3度、教会員が荷物を詰める

 

ジーザス・コミュニティ国分寺では、昨年5月から、コロナ禍で生活に困窮した人々に食料支援を行っている。今年の9月までの間に116世帯へ、各1万2千円相当の物資を届けてきた。この1年間で、さらにその支援の重要性を知り、「一人でも多くの人が、少しでも慰められたら」と、支援の輪を広げるべくクラウドファンディングで支援を募っている。

桜井知主夫さん。キリストの「仕えるものになりなさい」の言葉から「牧仕」と名乗る

 

「マタイ6章には施しをするときは『右の手がしていることを左の手に知られないようにしなさい』と書いてあるけれど……」と、ジーザス・コミュニティ国分寺の牧仕(ぼくし)、桜井知主夫(ちずお)さんは話す。この取材を受けつつも、自らの「施し」を人にアピールすることは本意ではない、むしろしたくない、そんな雰囲気が垣間見える。「私たちが所属するカルバリーチャペルは、献金のアピールをしないグループ」とも言う。しかし、そんな教会が、クラウドファンディングで支援を求めるほどに、生活が厳しく、支援を必要としている人が多くいるのだ。

コロナ禍で経済格差が広がっていると言われている。収入があるところにはより多く、ないところはますます少なくなっていく。そんなニュースを耳にし、桜井さんは、国分寺、小平、国立など、教会周辺の都営住宅に、食料支援を申し出るチラシを配布したという。当初は「千件に3件ほど」の応答があった。

そこから、ツイッターなどのSNSで情報が拡散され、国分寺の近辺だけでなく、埼玉や千葉、遠くは中国地方からも支援を求める声が上がってきた。

例えば、母親が精神的な病で入退院を繰り返し、祖母のもとにいるという高校2年生の女性は、「すべてを祖母に払わせて申し訳ない。私には保護者がいない」と言い、支援を申し込んできた。

中国地方から連絡してきた40代男性は東日本大震災で被災し移住した。現在もうつ症状やパニック症状を繰り返しているという。貯金もつき、何日も食べておらず、生活保護申請に行く気力も体力も交通費もなく「わらをもつかむ思い」で連絡をしてきた。

支援を申し込んでくる半数以上は一人親世帯だ。コロナ禍で収入が減ったというゼロ歳児の子をもつ19歳の母親。大学生と中学生を養いながらも週2回の勤務に減らされたという40代の女性など。

次に多いのが、大学生などの独身者、そして高齢者、外国人、ふたり親の困窮世帯などが続く。

要請を受ければ9割は物資を届けているという。「生活保護を受けるという選択肢もあるけど、それがいろんな事情でできない人もいる。むしろ生活保護がある人は、とりあえずは大丈夫だと思って支援しないこともある」とのこと。

支援物資「ケアパッケージ」には、お米やパスタ、レトルト食品、調味料などをネットスーパーから取り寄せ、「賞味期限が長い新品」を詰めている。それぞれの世帯にとって特に必要なものがあれば一緒に送る。支援は原則1回だが、本当に必要だと思ったら2回目を送るのだという。荷物は、直接届けることもあれば、宅配便を使って送ることもある。

本当は支援が必要ないのに、悪意とは言わずとも「お得」な思いだけで、申し込んでくる人などいないのだろうか。「ほとんどないです。あったとしても、その数パーセントを恐れていたら、残りの90パーセント以上の人を助けることができないですよね」

 

全国の教会の支援活動手助け
クラウドファンディング立ち上げ

同教会では20年ほど前から世界各地での災害支援に使命をもち活動している。写真は東日本大震災6日後の石巻で

 

「私たちの教会は、災害支援に導かれていると思います」と桜井さん。2004年のスマトラ沖地震で現地での救済支援をはじめに、台風カトリーナで被害を受けたアメリカで泥出しをし、東日本大震災の時には、その翌週に現地に行き、そこから5年にわたって支援を続けてきた。最近では、房総半島台風の被災地である千葉へも何度も足を運んだ。困っている人たちのもとへ、必要なものを持ってすぐに駆けつけ、助ける。そんなノウハウやネットワーク、心得などを、これまでの経験から蓄積してきた。

この食料支援も災害支援だと捉えている。コロナ禍という災害で苦しんでいる人々を助けるという視点で、今までの経験が生かされている。

支援することは神からの導き、と桜井さんは言うが「導き」だけではない。「マタイ25章に書かれている『最も小さい人たち』、つまり空腹の人、渇いている人、旅人、裸の人、病気の人、刑務所にいる人を訪ね、世話することができるように、いつも願って祈っているんです」というように、常に心を備えているからこそ、助けが必要な人々に気づいたとき、すぐ動き始めることができるのだろう。

クラウドファンディングでは、年間500世帯への支援のため800万円を目標に掲げている。西東京だけでなく、全国へケアパッケージを届けたいと願う。同時に、全国の教会、特に援助したくても予算がつかなかったり、どのように始めればよいか悩んでいたりする教会に「マタイ25章の実践の手助け」になればと「はじめの一箱の荷物を教会へ送るので、ぜひ届けてほしい。困っている人との接点を作る機会にして」と呼びかけている。 「日本は道路網がすごい。どこへでも宅配便を確実に届けることができる」。道路が整備されている日本だからこそできる支援だと桜井さんは思っている。かつて「すべての道はローマへ続く」といわれた古代の道を歩いて、福音が語られてきたように、現代のこの日本では、整備された道を通して、どこまでもキリストの愛の業が届けられていくのだろうか。

詳細はクラウドファンディングHP「【日本全国!】生活に困った方々に、みんなの力で、美味しい食料を届けたい!