J・I・パッカーは思弁的な神学者ではなく、神を畏れ愛する敬虔な(今風に言えば)霊性の神学者である。だが彼の霊性は、聖書より人間の感情を優先するヒューマニスティックな主観的霊性ではなく、「聖書のみ」「信仰のみ」を掲げた宗教改革者とピューリタンの遺産に根差したものである。だからパッカーは、地獄すなわち永遠の懲罰という主題は心痛むものであるとしつつも、神がこれを聖書に啓示なさった以上、正確に知る必要があるとする。

地獄に関する誤った理解としては、万人救済論と霊魂絶滅説(条件的不死説)がある。前者はエデンの園で悪魔が「あなたは決して死にません」と言ったように、誰でも最終的には救われると教える。後者は、義人は復活するが不信者の霊は絶滅するので永遠の懲罰はないと教える。

だが、聖書はなんと教えているだろう。主は、「ゲヘナでは、彼らを食らううじ虫が尽きることがなく、火も消えることがありません。」(マルコ9・48)と、ゲヘナの実在と懲罰の永続性を教えられた。パウロも「主は、神を知らない人々や、私たちの主イエスの福音に従わない人々に罰を与えられます。そのような者たちは、永遠の滅びという刑罰を受け、主の御前から、そして、その御力の栄光から退けられることになります。」(Ⅱテサロニケ1・8、9)と教えた。ヨハネ黙示録14・9~11、同19・20、同20・10も同様である。

主イエス・キリストが二千年前にゴルゴタの十字架を覆った暗闇の中で受けられた苦しみは、我々が世の終わりに下される永遠の懲罰の苦しみだった。キリストは我々から罪の呪いを受け取り、我々は信仰によってキリストの義を受け取った。だからこそ神は主イエスを信じる者を、今の世にあって義と宣言してくださる。

このように地獄の懲罰と信仰義認とは、密接不可分に結び付いている。パッカーは神を愛し畏れる正確な神学者として、聖書に基づいて地獄の教理を本書で明らかにしている。
(評・水草修治=日本同盟基督教団苫小牧福音教会牧師、北海道聖書学院教師)

信仰義認と永遠の刑罰
J・I・パッカー 著、長島勝編訳 
いのちのことば社、1,980円税込、B6判

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