2月6日号1面:豊橋駅前炊き出し 路上生活者に毎朝福音
豊橋駅前の炊き出しで路上生活者に毎朝福音 助け、助けられて今日まで 豊橋サマリヤ会代表 高島史弘さん
JR豊橋駅前で毎朝、ホームレスの人たちのために聖書のメッセージを届け、炊き出し(コロナ禍の現在はお弁当)を提供している牧師がいる。非営利団体「自立協力ボランティア豊橋サマリヤ会(以下・豊橋サマリヤ会)」代表の高島史弘さんだ。【中田 朗】
1月7日朝8時半、記者は炊き出しが行われる豊橋駅南口の交番前広場へと向かった。その日は、この辺り特有の空っ風がビュービュー音を立てながら、建物と建物の間を吹き抜けていた。1、2分立っているだけで身体中がブルブル震えてしまい、冬の寒さが身に染みた。朝の通勤時間帯で、乗降客はみな空っ風を避け、一目散に駅構内へと駆け出す。そんな中、階段の近くに目をこらすと、ホームレスの人と思われる男性が、厚手のジャンパーを身にまとってじっと座っていた。開始30分前から炊き出しをじっと待っていた男性だった。
9時になると、6人ほどのホームレスの人たちが集まり、高島さんも到着。まもなく集会が始まった。賛美歌「主我を愛す」をみんなで賛美し、その後に高島さんが祈る。
続いて10分ほどのメッセージ。個所はルカの福音書17 章34、35節の再臨の個所から。「神の前では、生きている間にイエスを救い主として信じないならば、死んだも同然。信じた者が本当に生きた者になる。今日、イエス・キリストを信じてください」と語りかけ、ホームレスの人たちのために祈った。その後、用意したお弁当を一人ひとりに手渡す。普段は炊き出しを行っているだが、今はコロナ禍のためお弁当にしているという。
前日の夜は、豊橋駅近辺をパトロールし、地下道などに寝ているホームレスに、温かいお茶を配った。ホームレスの一人は、「ありがとう」と言って高島さんにお礼を言った。このパトロールも、月に2回ほど定期的に行っている。
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高島さんは岡山出身で5代目のクリスチャン。18歳で地元の工業高校を卒業後、愛知県刈谷市に本社がある日本電装に入社。1994年、イースターに刈谷市内の教会で受洗。翌月、転勤のため豊橋市へ引っ越しした。
そんな高島さんが最初にホームレスの人と出会ったのは、1999年9月17日、名古屋駅で。献身を表明し会社を辞めて翌月のことだった。「岡山駅から夜行電車で名古屋駅に着き、豊橋行きの始発まで時間があったので、早朝の名古屋駅をぶらぶら歩いていたところ、構内で横になっていた男性に目が止まった。一緒に食べようとジュースやサンドイッチを買って話しかけると、『自分は何のために生きとるかわからん。死にたい』とこぼしていた。それを聞いた時、『こういうおじさんのために何かしなさいと神様が私におっしゃってるのではないか』と感じたのです」
その後、豊橋駅前でトラクト配りをしていると、3人のホームレスの人が近寄ってきて、「何してんの?」と尋ねてきた。「教会のチラシを配っている。ぜひ受け取って」と言うと、「俺たちも手伝ってやるよ」と、一緒に配ってくれた。
「『お礼せんといかんね』ということで、一緒にご飯を食べ、聖書の話をして伝道もする、ということが日課となっていった。やがて数人ずつ集まるようになり、聖書の話を聞いてから、みんなで一緒に食事をするというスタイルになっていき、2003年には『豊橋サマリヤ会』というボランティア団体になっていったのです」
会の名称では「支援」でなく「自立協力」にこだわりを持つ。「きっかけは私の支援活動ではなく、私がトラクト配布を助けてもらったことから。私が助けているようだけれど、向こうからもたくさん助けられてきた。だからこれは『支援』ではなく『協力』なんだと言い続けてきました」
会の立ち上げの際に模範にしたのは、 マザー・テレサとジョージ・ミューラーだ。「2人に共通するのは、すべての必要は信仰と祈りより与えられると信じて歩んだ点。サマリヤ会もその信仰にならい、助成金などは一切もらわずに、神様の働きとしてやろうと決めた。最初は私の貯金を切り崩しながら助けていた。その貯金は5、6年で底を突いたが、以降も様々な方々からの献金などで、神様が必要に応えてくださり、ここまで進んできました」
06年には、宝飯郡(現・豊川市)一宮町に、ホームレスの人たちのためのグループホーム「一宮ハレルヤ恵みホーム」を開設。水曜日の祈祷会と日曜日の礼拝をほぼ毎週休まず行っているが、緊急事態宣言などで、電話個別礼拝という形にする場合もある。
昨年はライフストーラー企画(URL https://life-storier.com/)から、豊橋サマリヤ会の20年の歩みを記した『隣人となる』を出版した。購入希望者はウェブサイトから。
豊橋サマリヤ会では、フェイスブック(URL https://www.facebook.com/toyohashisamariyakai)で情報を随時掲載。活動費カンパなどの問い合わせ先はTel090・9949・5190、Eメールtakashima.m633@japan.email.ne.jp 高島まで。