国際的な宣教団体「オープン・ドアーズ」が、世界のキリスト教徒への迫害状況を調査した報告書「ワールド・ウォッチ・リスト2022」(※)が公表された。世界中で少なくとも3億6千万人のクリスチャンが、深刻なレベルの迫害と差別を経験している。これは、世界のクリスチャン人口の7人に1人という驚くべき数字だとする。公表された分析と迫害の全体的な傾向を掲載する。

 

タリバン復活が事態を深刻化

 

オープン・ドアーズ】クリスチャンに対する迫害は、「ワールド・ウォッチ・リスト」が30年近く前に始まって以来、最悪のレベルに達しており、世界中でますます多くの信者に影響を与えている。

 

過激主義の増加暴力の増大

タリバンによるアフガニスタン再支配は世界中で話題になっているが、彼らをキリスト教徒やその他の宗教的少数派を標的とする、単なる暴力的過激主義者の集団だと思ってはいけない。彼らの勝利は、隣接するパキスタンのイスラム過激派を後押ししており、さらには他の地域のジハード主義者グループをも勢いづかせる可能性がある。

たとえば、今回ニジェールがその順位を一気に21位も上げて、「ワールド・ウォッチ・リスト」の上位50位に再度浮上したのは、イスラム過激派による一連の攻撃の後であり、それこそが順位上昇の最大の理由だ。タリバンの成功は、世界中の過激派の活動を助長している。

 

サハラ以南のアフリカでの暴力

ニジェールの信者同様、サハラ砂漠以南のアフリカのキリスト教徒も、イスラム過激派から日増しに加えられる極度の暴力に直面している。

これはナイジェリアでは特に深刻であり、世界の他の地域を合わせたよりも多くのクリスチャンが信仰のために殺害されているが、モザンビークでも、コンゴ民主共和国でも、中央アフリカ共和国でも、マリ、カメルーン、ブルキナファソでも、クリスチャンは極度の暴力に直面している。

「ワールド・ウォッチ・リスト」の上位50位に含まれない国であっても、キリスト教徒に対する執拗(しつよう)な暴力は行われている。南スーダン、タンザニア、ウガンダなどで、全体的な迫害の度合いが低い順位になっているのは、公的であれ私的であれ生活上の弾圧は、直接的な暴力に比べて、深刻さが低いとされてしまうからだ。

 

世界中の教会がますます難民教会に

そしてこのことはさらに教会を弱体化させている。国連難民高等弁務官によれば、世界中で8千400万人以上が強制的に避難させられ、他国で難民として生活しているか、自国内で避難している。これらの多くは迫害から逃れたクリスチャンであり、2021年にはさらに数千人が増加した。

アフガニスタンでは、クリスチャンが命を守るために逃げているが、一方、ブルキナファソ、マリ、ニジェール、ナイジェリアなどの国では、教会やコミュニティーが攻撃されている。目立った紛争がない地域であっても、イランのような場所からキリスト教徒が難民としてその地を去るのは、彼らがそれまでの生活であまりの差別に苦しめられてきたからだ。

彼らが望んでいるのは、ただ自由で安全な場所である。悲しいことに、移動を余儀なくされる生活や難民キャンプでの生活は常に不安定で、差別、恐喝、人身売買、性的暴力にさらされている。その地を追われた教会は弱体化する。オープン・ドアーズのパートナーは、多くの国の難民と協力し、生命維持に必要な援助、避難所、交わりを提供している。

クリスチャン新聞web版掲載記事)