現代は、目的をどうやってうまく達成できるかという価値観であふれています。時に、この結果主義が私たち信仰者を苦しませます。そんな私たちに本書は、うまくいくという方法論的な成功の道ではなく、神様に心を向ける観想の道、そして神に応答していく道を示してくれます。本書は、自分の目的達成のために働く神様ではなく、霊的同伴という、聖霊が導く道に、超越した神様との深いかかわりと愛を見出すことができると教えます。

これは、信仰者であれば、誰もが心の奥では望んでいることではないでしょうか? 本書を通して、自己啓発や自己肯定のために聖書を読むことでは味わえない、神の愛に満ちた深い交わりを見出すことができます。

 

しかし、ここで、私たちはすぐに『では、神の愛がどう私の問題を解決してくれるのか?』と考えてしまうのです。本書は、この信仰の落とし穴である、人間が主導で生きるの生き方ではなく、私たちの目線を、目の前にある『やるべきこと』ではなく、どんな時も、ただ『神様』に向けるお手伝いをしてくれます。

 

いつでも主を見上げる時、思うような結果にならなくても、神様が共にいてくださることを知らせる光があると著者である佐知さんは言うのです。

私たちは弱さを抱え、自分の罪深さがいやになったり、自己卑下することがあります。誰もが抱えている罪の問題です。それを解決するための自己肯定感は、どこか、キリスト教信仰と相入れない感じを心の隅っこで感じてる人は多いかと思います。が、本書は罪深さを見る視点を全く違う角度から教えてくれます。

失敗を克服し、うまくできたという、罪深さが消えていくという向上的信仰ではなく、罪深い人間に神様が寄り添うという形で神様が主導の人生を、『信仰の旅路』として本書は表わしています。信仰生活で成功論に疲れた方、主の平安をもう一度見出したいという方には、是非一読をお勧めします。あなたの遠回りを贖ってくれる主が待っているはずです。(評・中村穣=飯能の山キリスト教会牧師)

魂をもてなす 霊的同伴への招待
中村佐知著、あめんどう、1,870円税込、四六判