【書評】「小さな始まり」から福音派内外に役割 『日本同盟基督教団130年史』評・中村敏
本書は、現在日本の福音派の中で大きな役割を果たしている日本同盟基督教団の宣教開始から今日までの130年間の歩みを詳細にまとめた教団史である。本書を読み、次の聖句が浮かんだ。
「あなたの始まりは小さくても、あなたの終わりは極めて大きなものとなる」(ヨブ記8章7節)。もちろんその歴史はこれからも続くことは言うまでもないが。
1891年という明治期の半ばに、若い宣教師たち15人が宣教のスピリットに満たされて来日し、ゼロから宣教を開始した。その年の初めには、内村鑑三の不敬事件が起き、反キリスト教の風潮が強まる、逆風の中でのスタートであった。
彼らはそうした中で、日本の各地で精力的に伝道を開始していった。注目すべきは、初期から飛騨の高山や大島等の地方でも積極的に伝道し、困難と闘いながら各地で教会を形成していったことである。
本書は戦前・戦後の教団の歩みを6章に分け、それぞれの章に適切な見出しをつけ、内容を分かりやすくまとめている。概して教団史というものは、自分の教団の出来事や人物中心になりやすいが、本書はその時代の日本や世界の関連史や背景をしっかりと描写している。そして戦時下における神社参拝等の戦争協力も率直に記している。
注目すべきはこの教団の関心が、ただ自分たちの教団の拡大に集中するのではなく、後に超教派の大きな働きをする神学校や文書伝道、キャンプ伝道、そして海外宣教に積極的に関わっていくことである。
すなわち同盟聖書学院が日本クリスチャンカレッヂを経て、東京基督教大学に発展し、教職養成や福音主義神学の構築に大きく用いられている。また宣教団がいのちのことば社の創立にも尽力している。さらには松原湖バイブルキャンプを通しても、日本の宣教に貢献している。対外的にも靖国問題や天皇の代替わり、平和問題にも積極的に声を挙げている事が描かれている。
本書は、日本における宣教と教会形成に多くの示唆とチャレンジを与える教会史である。(評・中村敏 新潟聖書学院教師)
『日本同盟基督教団130年史』
日本同盟基督教団教団史編纂委員会編、
いのちのことば社 2,000円税込、A5判
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