【書評】教会の現場で考え抜かれた本格的福音主義神学概論 『新・神を愛するための 神学講座』評・牧田吉和
本書は、夕礼拝の「教理説教」に発し、その後の信州小海における開拓伝道と教会形成、さらには苫小牧での伝道牧会の中で育まれ、30年を要して結実した書である。「神を愛するための神学講座」というタイトルには本書の思いが集約されている。伝道の現場の中で粘り強く考え抜かれた著者の神学的姿勢に心からの敬意を表したい。本書は神学の原点を指し示す書でもある。
本書は、聖書に密着しつつ、難しい内容をわかりやすく、信徒の方々にも理解できるように叙述されている。牧会的思いが溢れている。しかし、内容的には軽い書物ではない。「組織神学概論」としての本格的内容を持つ。著者は哲学を専攻され、教会教父にも通じ、「弁証学」にも強い関心がある。本書にもその特色は色濃く反映されており、内容的にはかなり難しい部分を含む。牧師の指導の下で読まれると理解の助けになるであろう。
著者は積極的に持論を展開する。特に注目すべきことは教父に学びつつ「『神のかたち』は御子である」という主張を掲げることである(214頁以下、304頁以下)。その際、「御子」は神と人との創造の仲保者と理解される。しかし、この主張の意図は理解できるが(155頁)、議論されるべき問題である。「仲保」の概念は相互の対立を前提としている。創造論的意味において神と被造物の間に対立はなく、「仲保」の概念は成立しない。歴史的には議論のある問題であるが、個人的には誤解を避ける意味でも慎重でありたいと思う。
著者の神学的背景は改革・長老主義の歴史的正統主義の伝統である。創造論的視野が重んじられ、救済理解も包括的である。しかし、敬虔主義の陥る弱点も指摘されているが、同時に評価もされている。福音主義諸教会全体のことを考えて、バランスがとられている。この意味では、福音主義諸教会が安心して読める書、読むに値する内容豊かな書である。
(評・牧田吉和=改革派宿毛教会牧師)
『新・神を愛するための神学講座』
水草修治著、地引網出版、2,860円税込、四六判
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