石巻クリスチャンセンターの建物は2017年に献堂された

東日本大震災後、超教派で石巻クリスチャンセンター(ICC)が設立された。この働きを振り返った。【高橋良知】

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☆新連載 石巻の新しいことー序ー  2つの「川」

☆「同じ痛み」で愛に動く    ~1~ 

支援・伝道協力で次世代育つ  ~2~

悲しみの先の「復興」祈り活動 ~3~

地域にとって教会が持つ意味  ~4~

苦しむ人に教会がどう仕えるか ~5~

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ICC現地ディレクターの中橋スティーブンさんは、2011年東日本大震災時、大阪の大学生だった。米国の救援団体サマリタンズ・パース(SP)の働きに従事し、宮城県に引っ越した。

12年になると、活動は縮小し、冬にSPが撤退することになった。中橋さんはエレミヤ書29章11節が心に留まり、「何か神様の計画があるのではないか」と思った。「神様は自分の失敗も含め導いてくれた。多くのボランティアの方々の献身的な愛に教えられた。一人ひとりに賜物、役割があり、神様がそれらすべてを与える。出会ったかかわりを大切にしたかった」と話す。

そのような中、同年11月に発足したICCから声がかかり、現職に就いた。「地域の牧師は忙しい。牧会に集中できるようICCが支援をコーディネートした。しかしICC単独ではなく、地域の教会といっしょに活動することも大事にしました」

地域の人々とのゴスペルフェスティバル、クラフト教室、牡鹿半島の漁師の手伝い、教会間の情報共有や、祈り会など様々な手助けした。

宮城県の三陸沿岸の教会と協力した3・11記念会にも協力し、コロナ禍ではYouTube配信に取り組み、クリスチャンアーティストとともに、「未来プロジェクト~やさしさを大切に~」を発信している。

SP時代に出会った香港出身のアンさんと結婚し、子どもたちと暮らす。支援の経験をいかし、九州など各地の災害支援にも駆けつけた。地域に向けて定期的なバザー、若者の自立支援団体への協力、高齢者や生活に困る人へ弁当配布プロジェクトなど地域に奉仕する働きも継続している。

「平時の準備が大事。身の回りには心のケアが必要な人がたくさんいる。そのかかわりがいざという時、力になる。寄り添うことは、一方的なことではなく、常に思いを寄せていくことが大事。そのためには多くの人の祈りと支えが必要です」

「震災支援は幅広い。いろんな必要がある。『自分は何もできない』で終わらないでほしい。いろんな人ができることがたくさんある」と励ます。

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ICCは基督兄弟団石巻キリスト教会 と基督兄弟団、日本長老伝道会、日本福音自由教会災害対策本部(後に有志会が引継ぎ)、リーチグローバル(米国福音自由教会海外宣教局)の5団体で運営され、 石巻市およびその近郊で①キリストの愛のわざを行い、地域に仕える、②人々と福音を分かち合い、キリストの教会が生み出される拠点となる、③教会およびキリスト教諸団体の働きに協力し、仕える、ことを理念とする。

石巻キリスト教会牧師の長内慶満さんは「ICCがなければ、私たちの教会は、震災という大きな危機を乗り越える事は到底出来なかったのではないか」とICCの働きに感謝する。

「震災前と比べ、私たちの教会は、信徒が数的に急増したわけでもなく、同じ信仰的課題はある。しかし私たちの教会は、震災前よりも、地域の人々に積極的にかかわりを持って、仕えつつ、福音を伝えて行こうという姿勢へと変わった。私たちの教会は各方面の支援を受けて、神の愛の『広さ、長さ、高さ、深さ』(エペソ3・18)を豊かに体験することが出来た。そのことによって、私たちの教会は、国内外の様々な自然災害に対して、積極的に執り成しの祈りを捧げ、積極的に支援していく姿勢へと変えられつつある」と話す。

「『教会の働き(支援活動を含む)』は、『個人(1人・1教会・1教団)の働き』ではなく、『チーム(世界中のキリスト者・教会・信仰共同体)の働き』」と言う。「『キリスト者(教団内の教会・超教派による地域教会・国内の教会・世界中の教会)』は、キリストにあって、『チーム(一つのかたまり)』となって『主の業(キリストの愛の働き)』に励んで行く事が大切」と勧める。「このように歩み続けて行く時に、キリスト者同士の新たな出会い、協力体制、宣教団体の設立など、主は、『新しいこと』(イザヤ43・19)をなされる可能性がある」と期待した。

「働き人」の課題がある。「『収穫(様々な主の働き)』のために、『主の働き人』が起こされるように祈ること(マタイ9・37~38)が大切。さらに自分自身が『主の働き』のために何が出来るのかを考えつつ、『主の働き』に『参加し(何か出来ることを行い)』協力する、可能であれば、主の働き人を支援して送り出すことが大切だと思います」(つづく)