読者がこれを読まれる頃には、ロシアとウクライナの間の戦闘が終結していることを祈りつつ、この原稿を書いている。日本では、ロシアによるウクライナ「侵攻」と表現されているが、ドイツでは最初から「戦争」と表現されていた。「ヨーロッパ全体を巻き込む戦争になるかもしれない」「核兵器が使われたら、自分たちの住む地域も放射能で汚染される」と不安になる一般市民もいる。

井野葉由美さん

戦争勃発と同時に、ドイツ政府は難民が押し寄せることを想定し、そのための予算をすぐに計上した。人道支援のために素早く動く、ドイツの政治のあり方に感動した。様々な団体が難民のための支援物資や寄付金を集めるための活動も始めた。私たちミュンヘン日本語教会は、ロシア語教会が難民支援物資を集めているという情報を入手し、そちらに物資を届けた。こういう支援物資を送る際、ドイツでは何がどれだけ必要か提示されているのがありがたい。最初期には、ベッド、エアマット、寝具、タオル、衛生用品、缶詰などがリストアップされていた。さらに「一つの小包の中に、油1ℓ、小麦粉1㎏、砂糖1㎏、云々…」と指定される時もあり、自分の状況に応じて小包を作って届ける。そのため、現在スーパーマーケットでは、小麦粉やスパゲティが売り切れのことが多い。難民はドイツにも入って来ていて、子どもたちは、すでにインターナショナルスクールや現地学校で学び始めている。この辺りの対応の早さも、今までのシリア難民の経験があるからだろう。
ロシア語教会がウクライナのため労していることにも、心打たれる。ドイツには、ロシア人もウクライナ人も多数住んでいる。祖国同士が戦争していても、ドイツに住む両者が互いを敵とみなすことが無いよう祈っている。

(この後井野氏は、全ヨーロッパの同時祈祷を語ります。2022年4月10日号掲載記事)