「罪」という言葉の使用は「ヘイト」? フィンランドで裁判に
検察官主張「『罪』という言葉は有害」に 信仰者が無罪獲得 フィンランド国会議員
ポホラ司教(左奥)とラサネン氏
フィンランドで1995年から国会議員を務める女性が、その信仰の表明故に検察から訴追され、3月30日ヘルシンキ地方裁判所で無罪となった。ANS(アシスト・ニュース・サービス)が報じた。
【ANS】フィンランドの裁判所は、フィンランドの国会議員パイヴィ・ラサネン氏とルーテル福音教会司教ジュハナ・ポホラ氏に対するすべての起訴を却下し、彼らの言論の自由の権利を確認した。判決は全会一致で、裁判所は「地方裁判所が聖書の概念を判断することはない」と結論付けた。検察は、訴訟費用として6万ユーロ以上を支払うよう命じられ、判決に対して上訴するために7日間の猶予がある。
元内務大臣であるラサネン氏は、結婚と性道徳に関する彼女の信仰に基づく見解を、2019年に行ったツイート、ラジオ討論、04年に作ったパンフレットで公にしたことが、「ヘイトスピーチ」にあたるとして起訴されていた。ポホラ司教が起訴されたのは、そのラサネン氏のパンフレットを、17年以上も前に彼の教会員のために発行したことが、罪に問われたものだった。人権専門家が、この事件はフィンランドにおける言論の自由を脅かす、として懸念を表明したため、この裁判は今年、世界のメディアの注目を集めた。
キリスト教の教えが裁判に
この衆目を集めた裁判には、多大な関心が寄せられた。ことにそれは、検察がキリスト教の中心的な教えを突いて、法廷で司教とラサネン氏の神学に対して反対尋問した後、顕著だった。検察官は、この事件は信仰や聖書を問題としているものではないと主張して、裁判の初日を開始した。
続けて検察官は旧約聖書を引用し、「罪人を愛し、罪を憎む」という言葉を論評した。最終弁論では、「罪」という言葉を使用することが相手に対して「害」を及ぼす可能性があると主張し、有罪判決が下された場合には多額の罰金を科すよう求めた。
ラサネン氏の弁護団は、これを有罪と認定するなら、フィンランドにおける言論の自由に重大な損害を与えると主張した。ラサネン氏が表明したことは、彼らが言うように、あくまでもキリスト教の教えの表現だった。
裁判所は、ラサネン氏の発言内容に反対する人はいるかもしれないが、「表現の自由を妨げ、制限する場合は、何をおいてもそうしなければならないだけの社会的理由がなければならない」と認め、この事件においてそのような理由は見いだせない、と結論付けた。
ツイートが法廷に
パイヴィ・ラサネン氏に対する警察の捜査は19年6月に始まった。フィンランドルーテル教会の積極的なメンバーとして、彼女はこの年ツイッターで教会の指導者に対して、新約聖書のロマ書の画像を添えて、教会がLGBTイベント「プライド2019」の公式スポンサーになったことに疑問を呈していた。このツイートに続いて、ラサネン氏に対するさらなる捜査が開始され、それはさらに、彼女がほぼ20年前に書いた教会のパンフレットにまでさかのぼった。
この2年間、ラサネン氏は数度にわたり警察から長い取り調べを受け、彼女のキリスト教信仰ついて尋問された。そこでは、彼女の聖書理解について説明するよう警察から求められることもしばしばだった。
21年4月、フィンランドの検事総長は、ラサネン氏に対して3件の刑事告発を行った。そのうちの2件は、警察が起訴を継続しないように強く勧告した後に起こった。ラサネン氏の発言は、ツイッターや国営放送局のコードにも違反していなかったため、いずれにおいても自由に閲覧、放送されていたからである。ヘルシンキ地方裁判所は現在、すべての容疑でラサネン氏を無罪とした。(編集部注=検察はこの後控訴した)
(クリスチャン新聞web版掲載記事)