陳央仁さん

龍ケ崎済生会病院産婦人科医の陳央仁(ちん・おうじん)さん(台湾出身、筑波福音基督教会員)は、「子どもたちにいのちと自分自身を大切に生きてほしい」と、2003年以来、茨城県を中心に関東の小学校、中学校、高校の生徒、またその保護者や教師を対象に〝いのちの授業〟と呼ばれる「生教育講演」を行ってきた。いのちの授業の評判は口コミで広がり、地元茨城では「小・中・高と3回、陳先生のいのちの授業を受けた」という生徒は少なくない。その数はのべ千300回にも上る。

4月26日、埼玉県三郷市にある県立三郷高等学校で、今年度初めてのいのちの授業が全校生徒対象に開かれた。タイトルは「自分を生きる~愛し愛されるために~」。陳さんの講演は、性の問題だけでなく、「いのちの大切さ」を産婦人科医の立場から伝えることから、「生教育講演」と呼ぶ。1時間半に及ぶ講演だったが、生徒たちは皆、陳さんの話を食い入るように聞いている姿が印象的だった。

三郷高校で。妊娠のしくみを説明する陳さん

いのちの授業は19年前、病院近くの中学校の女性教師から相談を受けたことを契機に始まった。「彼女が妊娠し、僕のところに妊婦健診に来られた。健診が終わったその帰りがけに、『学校の女子生徒たちが性に関して問題を起こしている。その子たちにいのちの尊さを伝えたいが、どうすればいいですか』と、相談を持ちかけられたのです」
経験がないので、とりあえず胎児の超音波映像を撮り貯めることに。その後、「産休に入る前の最後の授業で、胎児の心臓の音を生徒たちに生で聞かせてあげたいので、機械を貸してほしい」と彼女に頼まれ、事情を病院担当者に話したところ、「医療機器だから、素人が使って問題が起きたら責任が取れない」と断られてしまった。
困った陳さんは上司に相談。すると、「だったら、陳先生が行って来たら」と言われた。こうして陳さんが学校に行くことに。「せっかく学校に来てくださるのなら、15分ほどの話をしてほしい」と頼まれ、「素敵な女性になるために」の題で話をすることになった。「これがすべての始まりでした」(詳細は紙面で)