先月29日に全身がんによる肝不全のため74歳で亡くなった小坂忠氏(フォースクエア・秋津福音教会宣教牧師)の追悼告別式が、5月7日、所沢市民文化センターミューズ、マーキーホールで行われ、教会関係者、音楽業界関係者、一般の参列者も多数集い、氏の生前の活動の広さをうかがわせた。司会はニューホープ横浜牧師の山口武春氏が、説教はアーサー・ホーランド氏が務めた。喪主は妻の高叡華氏。

山口氏は冒頭、「ここには、神様を信じる人信じない人、様々な宗教の人がいるが、愛する小坂忠先生の死を悲しむ気持ちは同じ。今日は忠先生が信じ続けた神を礼拝するときとしたい」と語った。

続いて音楽宣教ミニストリー「ユーオーディア」代表の柳瀬洋氏が、ギリシャ語で「最上の香り」を意味する「ユーオーディア」の名付け親が小坂氏であること、様々なジャンルのクリスチャン音楽家が集まる中で「賛美というジャンルで我々は一つだ」と小坂氏が語っていたことを振り返り、ユーオーディア・アンサンブルで小坂氏作曲の「恵みの雨」「勝利者」を演奏した。

ユーオーディア・アンサンブル

生前のライブ映像が流された後、3人が小坂氏との思い出、氏への想いを語った。

フォースクエア福音教団総理で函館シオン教会牧師の増井義明氏は、アメリカ留学時に様々なクリスチャン音楽を聴く中で、日本では小坂氏の賛美が飛び抜けて洗練されていると感じたこと、帰国後同じ教団内で親交を深める中で、「君が教団総理になったら応援する。みんなでイエス様のことを伝えよう。僕はいつでも何でもするから」と言われたことを語った。先月9日に電話で話した時には「もう時間がない。伝える人は大勢いる」との言葉を聞いて、「自分も同じメッセージを伝え続けていきたいと思った」と語った。

1970年代に小坂氏と同じバンドのメンバーだったドラマーの林立夫氏は、当時の小坂氏を「バンドのボーカルなのにどこか自信無さげだった」と評し、20年後に再会してまた音楽活動をするようになった時には、中身は大きく変わってパワフルになり、曲の間のMCでも「人として大切なことを話してくれた」「自分でなく人のために歌う忠さんの後ろ姿から、人前で音楽を演奏する意義を学んだミュージシャンは少なくないはずだ」と語った。

イギリス出身のブロードキャスターで音楽評論家のピーター・バラカン氏は、2010年から小坂氏と親交がある。アメリカのソウルミュージックを聞いて育った氏は1975年に来日。翌76年に発表された小坂氏のアルバム「ほうろう」を聞いて、尊敬するソウルシンガーたちと同じフィーリングをそこに感じたと言う。年齢を重ねてソウルの奥にゴスペルがあることを深く意識するようになり、ソウルの偉大な歌手のあの説得力は信仰心に尽きると思うようになった。「忠さんのパワーもそこにあると思う」と語った。

弔電が披露された後、小坂氏の娘のエイジアさんが、ジャズのスタンダード「アンフォゲッタブル」を、父の音源を使ってデュエット。アーサー・ホーランド氏は、小坂氏から新しい歌が生まれたのは、その信仰が生きていた証しだとして、救いのメッセージを語り、その後ステージ上のミュージシャン全員で小坂氏が望んでいたという「He comes with the glory」を賛美した。

最後に高氏があいさつ。結婚して50年以上ずっと一緒にいて働いてきたこと、がんの治療を終えて今年から自宅で看護する中、4月17日のイースターに車イスで教会に行き、イスに座ってメッセージしたこと、お互いに「愛しているよ」と言って目を閉じたこと、亡くなる前日には1泊で軽井沢にも行けたことを語り、「これから一人になっても、今までやってきたことを続けていきたいと思う」と語った。

高叡華氏