寄り添う姿勢を大切にしている

 

福島県福島市の介護付有料老人ホーム「聖ハートフルケア福島『十字の園』」は県内で教育・福祉を幅広く展開する創世グループの株式会社創世が運営する。施設長の池田敬緯子さんは、「元気な人から要介護の人まで、天国に召されるまでお部屋で過ごしていただく。キリスト教の愛の心で運営している」と話す。

「自立した生活ができる人には、クラブ活動、様々なイベントなどを入居者主体で企画して実施している。要介護で重度の人は、自分から状態を訴えられない方が多いので、昨日と今日の変化を職員の方で気づくことが重要になります」

「職員が頻繁に状態を観察する、話を聴く」と言う。「若い職員には孫のように気にかけてくださる。依存などに気を付けつつ、大切なことは寄り添う姿勢。様々な訴えについて『違う』と思っても否定せず受け止める。様々な生き方や社会的な立場をへてきた入居者のお気持ちを尊重しながら接しています」

入居者にとっては、面会で家族とのつながりを確認できることが重要だったが、コロナ禍でそれが難しくなった。職員は電話や手紙でこまめに入居者の状態を伝えたり、写真を送るなどしてサポートした。「リモートでの面会を利用する人は一部にとどまる。家族や親族の事情でまったく面会がない人もいる。職員は家族にはなれないが、そばに寄り添う存在として安心していただきたい」と話す。

十字の園の建物

 

2011年の東日本大震災の経験が危機対応に生かされている。「震災当時、休暇中の職員も駆け付けて4階ある建物から車いすや寝たきりの入居者を階段で一階の広いホールなどに避難した。停電や断水が数日続いた。職員も泊まり込みで介護をしながら避難生活を共に過ごした。皆さんが気を張っていたためか、入居者の症状の悪化はなかった。食事は十分ではなかったが『戦時中はこんなものは食べられなかった。幸せだよ』と語る戦争体験者もおられ、入居者の皆さんの姿に職員も励まさせれた」と振り返る。

 

昨年、今年と震度6レベルの地震に見舞われ、停電もあったが、「全職員が駆け付けて対応できたのが心強かった」と言う。放射能の問題については、風評の影響も含め、「通常の状態、気持ちになるには何年もかかった」と話す。

自身も96歳の義父の介護を体験した。

「元気に独り暮らししていたが昨年から歩けなくなり、食事もトイレも我慢するようになった。毎日食事を届けたり、休みの日に洗濯するなどしてきたが仕事をしながら続けるのは限界がある。今まで自立して生きてきた父なので、最初は抵抗があったが、施設に入居したら今は元気になり食事もきちんと食べてお風呂に入り穏やかに過ごしている。生活基盤を整えることで元気に生き続けられる人は多い。ご入居希望のご家族様からの相談には、『不安な部分を様々なサービスで補うのは悪いことではない。本人も家族も安心して過ごせることが大事』とアドバイスしています」【高橋良知】

クリスチャン新聞web版掲載記事)