8/9紙面:土蔵の壁から見つかった十字架 キリシタンの痛切な思い伝える
大阪府大東市の単立・野崎キリスト教会牧師で、キリシタン史研究家の神田宏大氏は「中世の今の大東市、四條畷市に建っていた飯盛山城の山麓に位置する河内地域は、キリスト教がもっとも拡がり繁栄した場所です」と、語る。四條畷市立歴史民俗資料館の説明にも「キリシタン時代の四条畷は、外国の宣教師らが往来する異国情緒あふれる地域でした」と、ある。
その後キリスト教史で類を見ないほどの厳しいキリシタン弾圧時代を経て、大正時代末期、四条畷のある民家の古い土蔵の壁から、銅製の十字架が発見された。縦14㎝余り、横9㎝余りの十字架の由来は何もわかっていないが、弾圧の時代に密かに土蔵に塗り込められたものであると推察されている。同民俗資料館が保管している。
長年空気に触れないまま土壁の中にあった十字架は、驚くほど損傷がなく古びてもいない。一度は展示されたときに盗まれ、いつのまにかこっそりと市役所に返されていたという。隠れキリシタンの痛切な思いを伝える。【藤原とみこ】