神の痛みを察知する感性、知性、霊性を身につける学びを 東京基督教大学
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山口 グローカル神学はすでに掲げていた「Stand in the Gap 破れ口にキリストの平和を」という理念をより実践的にしたものです。本校では留学生が四分の一いますし、グローバルな視点はすでに十分ありますが、それをよりローカルに落とし込むつもりです。神学とは本当に人を生かし問題を解決する力です。ただ時代に迎合して役に立つ、というのではなく真の意味で社会にとってかけがえのない人を学問を通して養成していきたいと思っています。
森田 具体的には、地域で不登校児の居場所づくりをしている団体と交流が始まっています。この課題の背景には社会制度の在り方とともに、人の心の内にある傷や孤独といった、私たちの目には見えないものも含まれるでしょう。つまり破れ口は、表面に見えてくる課題であると同時に、目に見えていないところに触れてくださる神ご自身が痛んでおられるリアリティーです。ですから、学生が地域と関わるなかで、課題を解決する方策を共に考え実践するだけではなく、霊的な洞察を深めるうえでの神との関わりも不可欠です。
山口 2020年に2学科を統合し、総合神学科としました。学生たちの声を聞き、その益を考えました。はじめの2年間はクリスチャンとしての生活を身につけ召命感の確認をしながら幅広くリベラルアーツを学び、3年次から教会教職、グローバルスタディーズ、ユーススタディーズ、キリスト教福祉、神学教養を選びます。教会教職では、さらに大学院に進みます。また副専攻で教会音楽を学ぶこともできます。教会教職の学生が、キリスト教福祉を学ぶ学生と共に学び、地域に赴任したとき、地域のニーズを見つけ、関わっていくこともミニストリーとして重要な課題です。地域に浸透していく牧師に育ってくれることを期待します。
森田 「グローカル」はローカル(地域)とグローバル(世界)の造語です。つまり、グローカル神学は、地域に深く関わるけれども、むしろ世界にも開かれたものであることを意味します。そういった地理的な領域の違いのみならず、文化や言語の違い、そして霊と肉といった分断を超えた一体性を包含する営み、それがTCUが目指す神学です。そのためにこれからのTCUには、まず身近な地域との関わりを通して、人々が求めていること、そして神が痛んでおられることを察知する感性や知性を培う取り組みが必要です。しかしそれには、自分の痛みや弱さにこそ向き合い、神との関わりを深める霊的変容のプロセスが土台になければなりません。聖霊に導かれながら神に、そして地域に応答してゆく。そのような旅路をグローカル神学は歩みだそうとしているわけです。
【来場型オープンキャンパス】
7月23日(土)、8月20日(土)午前10時から。参加者には交通費、宿泊費の補助あり。詳しくはウェブサイトをご覧ください。URL=www.tci.ac.jp
東京基督教大学
千葉県印西市内野3丁目301番5 tel.0476-46-1131 fax.0476-46-1405
学生インタビュー
相手を知ることが大切と学んだ
国際キリスト教福祉学科4年 峯村淳甲さん
東京基督教大学(TCU)では「キリスト教の価値観がどんどん広げられている」という。特に最初に受けた「異文化理解入門」の授業がその他の学びや学校生活に影響を与えている。「一対一の人間関係も異文化だよねという視点を与えてくれたことが大きかったです。寮生活のなかでも実践的にその視点が活用されました。同じクリスチャンでも違う人間」。だからわかった風にするのでもなく、相手を知る必要があると学んだ。
「イエス様が姦淫(かんいん)の女に石を投げさせなかったように、さばくことは神にゆだねて、その人や社会が抱えている問題をフォーカスして、必要を知り、よりよく解決するために寄り添うことが隣人愛の実践だと思います」
卒業後は大学院へ進みたい。「コロナで2年間、寮生活ができなかったので、まだここで生活したい気持ちがあります。それにもう少し聖書の土台をしっかりさせてから社会へ出ていきたい」
大学院では「日本在住クリスチャンの相違について」、もしくは「戦争反対と叫ぶ前に、より積極的に、ではどうしたら戦争が回避できるのかを聖書に立って論理的に研究していきたい」と願う。
学んだことを生活で実践できることがこのうえない喜び
総合神学科2年 小宮櫻子さん
高校生のころから、インド、カンボジア、ミャンマーなど様々な国を訪れていたという。「その時はまだクリスチャンではなくて、国際社会の問題や歴史背景などいろいろ学んで、議論されていることは理解していたのですが、多くの人がそのために働いているのになぜ貧困などの問題が解決しないのか憤りを感じていました」
その頃ミッションスクールで神様を知った。そして「人の罪ゆえ」搾取し搾取され、支援だけでは多くの問題を解決するのに限界があり「神様に与えられた賜物(たまもの)を知り目的をもって生きるため」福音を知ってほしいと思うようになった。
TCUに入学したのは母の勧め。「全寮制でいろんなことがあります。でも私たちは人に仕えるために学んでいます。それが生活のなかで実践される瞬間がこのうえない喜びなんです。もっと学びたくなる」。授業で特に楽しみにしているのは「組織神学」と「キリスト教と開発」。「組織神学」で神様の摂理、聖書を読み解きみこころを知り、それを「キリスト教と開発」で、社会の問題にどう生かしていくかを学びたい。
3年次からの専攻は「示しが与えられれば教会教職、そうでなければ様々なことを学べる神学教養を専攻したい」と思っている。
(クリスチャン新聞web版掲載記事)