タイ国でハンセン病者・回復者と向き合った看護師・阿部春代さん 「足を洗い続けた30年だった」
阿部さん
阿部さんは青森県出身。岩手県盛岡市の看護学校2年だった1975年春、通い始めていた教会の牧師に引率され、青年たちで、青森県の国立療養所松丘保養園を訪問した。「看護学生でありながら、隣町にハンセン病の療養所があるのを知らなかった」と、ハッとさせられた。
さらに驚いたのは療養所内の教会に集う入所者の姿だった。「賛美する皆さんのお顔が笑顔であふれていた。顔や手にある後遺症を意識させないほど、生き生きした姿がありました」。同年8月には、好善社のワークキャンプが松丘保養園で開催され参加した。その体験の興奮が冷めやらず、休日で実家に戻る時には、同園にたびたび訪ねた。そこで入所者の信仰に触れて、洗礼を受けた。
その後のワークキャンプや講演会で、日本復帰したばかりの沖縄の現状を知る。当時沖縄のハンセン病事情は本土よりも30年遅いと聞いた。78年から81年まで好善社派遣看護師として宮古南静園で働いた。一人の患者は自分の足の裏をカミソリで削って手当てし、「この傷は死ぬまで治らない」と話していたことが印象に残っている。
続いて81~90年は岡山県の国立療養所 邑久光明園で働いた。82年に初めてタイの療養施設を訪問した。当時年間3千人の新規患者がいたが、「日本のように隔離ではなく、患者が家族とともに暮らし、貧しい中で懸命に生きている姿に引き付けられました」
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好善社は、米国人宣教師ヤングマンによって1877年に始まったキリスト教精神に基づく、社会奉仕活動だ。一人の女性のハンセン病患者との出会いがきっかけとなり、「英国救らい協会」の支援を受けてハンセン病問題に取り組むようになった。同社設立100年となった1977年以降、西洋から受けた支援に感謝し、アジアの発展途上国のハンセン病支援に取り掛かった。80年には台湾の医療伝道を支え、82年にはタイ国でクリスチャンの医師と出会い、87年に姉妹団体「チャンタミット社」創立にかかわった。現在も人的、経済的支援を続ける。
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講演は千葉教会で
阿部さんは90年から好善社派遣看護師としてタイ国にわたった。タイ東北部のコンケン県にある国立ハンセン病療養所ノンソムブーン(現県立シリントン病院)に赴任した。
「足を洗い続けた30年だった」と話す、、、、、、、、、
(クリスチャン新聞2022年7月10日号掲載記事)