【連載】教会実務を考える⑤ 教会の文書管理について
河野 優
石神井福音教会協力教師 前日本同盟基督教団法人事務主事
教会の文書管理について
前回は教会において作成される基本的な記録文書として、週報、月報、年報、役員会等の議事録を挙げ、その宣教的な意義について確認した。今回は、そうした文書を適切に管理するために必要ないくつかの点について見ていきたい。
教会においては様々な記録文書を作成するが、それらを教会として意識的に管理しているところは、残念ながらさほど多くはないと感じている。管理していても、牧師や重荷のある信徒など一部の人が、いわば個人的に行っているような状況があるのではないか。その場合、管理方法がその人の「自分ルール」でなされることになり、当人がいなくなると記録の保管が途絶えてしまうことになるだろう。
そこで教会としての公的な取り決めを作成し、引き継いでいくことが重要になる。その取り決めはできるだけ簡潔なものにすることが肝要である。というのも、複雑で独特な取り決めは結局、特定の人にしかできない管理方法になることが多く、継続的な管理が難しくなってしまうからである。では具体的に、どのように管理体制を整えていくのか。
まずは目的の確認。単に記録を残すことが目的ならば、あまり意味がない。「後代にわたって宣教に生かされる文書記録を残していく」との目的を個人だけではなく、教会として確認し、共有することが必要である。適切に記録文書を作成しても、それを生かすことができなければ無駄になる。過去の歩みを振り返ってこれからの宣教に生かそうと思っても、適切に記録が作成・保管されていなければ無理である。そのため、「作成段階から」目的を意識して取り組むことが大切になる。
宣教のために適切な「保管」「閲覧」
その目的を踏まえたうえで、作成すべき文書、保管すべき文書とその期間、保管方法(書式やファイリング方法、紙と電子データ等)などを定める。これらは官公庁等の一般的な公文書管理基準を参考にすると良い。一定のルールを定め、それに則った管理をすることで作成・保管文書の質を維持し高めることができ、保管文書に対する信頼性も高めることができる。
文書作成の取り決めとして、例えば使用する用紙のサイズは統一されているだろうか。少なくとも冒頭の基本的な記録文書のサイズは統一することで紙文書の保管ファイルのサイズがそろい、管理上も扱いやすくなる。会議記録などは必ず記すべきこと(開催年月日、会場、出席者、議題と議論の経過、署名など)を確認し、「5W2H」を意識して作成することが必要である。
文書保管の取り決めとして、例えば保管期間については、基本的な記録文書は永年とし、会計帳簿や領収証などは法定の期間に準じて廃棄するのが良いだろう。保管は印刷された紙文書と電子データ(PDFなど汎用性のある規格)両方とするのが望ましい。紙文書は全体を俯瞰(ふかん)できる一覧性に、電子データは語句検索が容易で検索性に優れており、それぞれの良さを利用することで保管文書を用いやすくなる。
以上のものに加えて、保管文書の「閲覧規程」を設けることをお勧めしたい。個人情報等の保護が叫ばれると共に、情報開示・閲覧する権利についても同様に求められる時代にあって、教会もその責任から逃れることはできないからだ。正当な請求には応え、不当な請求は退けるために、また恣意的な運用を避けるためにも適切な規程の整備が必須である。
文書管理は教会の自律性が問われる重要な働きである。適切な文書管理は後年、過去の教会の歩みを客観的に検証し吟味する重要な証言となり、それは主の再臨まで続く宣教の働きに生かされる。すぐにその恵みを味わうことはできないが、数十年後、後の世代の教会のための働きである。目に見えるような成果がすぐには出ないことが多いため、取り組みには長い目で見る必要があることを、しっかり心に留めたい。