展示の様子。東京・日本橋

赤と緑だけではない多様な色で、日常と聖書をつなぐクリスマスの表現があった。

8人のクリスチャン・アーティストによる、クリスマスをテーマにした作品展「8つの表現展」が12月4日から、東京中央区日本橋のギャラリー・カノンで始まった。10日までの日程(午後0時30分~午後8時、最終日午後5時まで)で、テンペラ、油彩、彫刻、書道、鋳造水引、水彩、写真、デジタルアート、アクリル、日本画といった多彩な表現の展示のほか、ワークショップやコンサート、ギャラリートークも開かれる。その展示の模様を伝える。

展示室入口付近。左からMay Soさん、内田さん、加藤さんの各作品

まだ紅葉も残り、遅れ気味の冬を感じさせた12月初めの昼下がり。東京・日本橋にあるギャラリーの地下階段を降りると、展示室入口で、東京の夕暮れを描いた風景画が迎えた。室内では、繊細なグラデーションがある絵画、花々の大きな写真、水引のアクセサリー、金箔を背景にしたテンペラ画、街と教会を描いた水彩画など、色彩豊かな作品が並ぶ。その中で、1つの壁側の一列は、白一色の彫刻群だった。

小泉さんの作品

多くの作品は直接クリスマス降誕劇の場面やツリーやリースなどを表現はしていないが、小泉恵一さんの彫刻群は、アブラハムの契約から、受胎告知、イエスの生涯から十字架までのストーリーで配列されていた。

「まだまだ聖書の中には、彫刻で表現されていない様々な場面がある。古典的な表現であってもやれることは多くある。実は中世、ルネサンス以来のキリスト教美術でも、ギリシア神話などの影響を受けたものが多い。聖書の記述、文脈に忠実な表現を追求していきたい」と話す。

左から塙さん、服部さんの作品

小泉さんの十字架像の横には、塙茂樹さんによる、十字架の水彩画「死からいのちへ」があり、関野和寛著『神の祝福をあなたに』(日本キリスト教団出版局)で使用された挿画の原画が並べられた。ロック牧師で知られる関野牧師の柔和な素顔が、教会堂や新宿の街並みとともに描かれていた。「おのおのが神にデザインされた自分らしく輝けること、世界が神様の愛で満ちることを心より願っています。」

テンペラ画家の服部州恵さんが、金箔を背景にした絵画を描くようになったのは、コロナ禍以後。「一般の美術でも金箔を背景にした作品が増えていた。出エジプト記にもあるように、聖書では、金色は聖なるもの、また、天国を表わす色。クリスチャンとして金色をしっかり表現したかった」と言う。作品では、祈ったり、天を仰ぐ少女たちの背景に金箔が貼られていた。「キリスト教絵画の伝統表現を生かしているが、聖人たちだけではなく、普通のクリスチャンの背後にも神様の祝福があることを表わしています」

君塚さんの水引作品

中国や日本などで、祝いの装飾に使われる伝統工芸「水引」にキリスト教から新たな光を当てようとしているのは君塚聖香さんだ。紙などでつくられた水引とともに、錫製の鋳造水引を編み出した。柔らかい錫は指輪などにしても収まる。

社会の困窮した人々に関心をもってきた君塚さんは、昨年、小泉さんや服部さんらと開いた展示を通じて、カンボジアで経済的に困窮している女性たちの職業支援する団体とつながった。「フェアトレード製品が流通されてきているが、なかなかデザイン性が低く、購入されないということがある。デザインの面で貢献できることがあると思う。将来的には日本の中にある困窮する人をサポートする働きにも取り組んでみたい」と語った。

アクリル画家の加藤育未さんも、表現と社会問題両方への意識をもっている。絵画は、悲しみから喜び、イスラエルの苦難の歴史、花嫁の思いなど、何重にも塗られた抽象的な表現。地球上で脅かされている人々や動物を思い、肉食をできるだけしないヴィーガンの生き方をクリスチャン、アートとともに柱にしている。今回の作品の売り上げも、難民や動物保護のために一部献金する。

バイリンガルなルーツを背景にし、デザイナー、社会起業家として活躍しつつも、健康や家庭での苦難を体験した内田綾香さんは、近年日本画を学び、その表現を追求している。展示室入口手前の風景画は内田さんの作品だ。一連の作品は「インマヌエル」となづけられ、風景の中にクリスマスのメッセージが込められた。「日本画の絵の具は、虫や植物など自然から生まれた色。制作している間もその色に癒される」と語った。

香港出身のMay SOさんは三位一体をイメージした三つの光の輪の連作。黄色や青色がうっすら波紋を広げ重なりながら広がり、神の栄光や愛などの性質が表現された。一連の作品の最後に文字作品を展示前日に描き上げた。2017年に来日し、20年からアート宣教師の召命を受けて活動している。

左手が周さんの写真作品

上海出身の周海慧さんは、日常歩く中で撮りためた草花の写真を作品化した。「本業のイメージコンサルタントの延長として、感性からではなく、色、線、形、バランスなど美の要素を基準にして作品をつくった」と話す。草花の写真とそれをデジタル加工した写真をそれぞれ展示した。「主の十字架」や「聖なる都」などのタイトルがつけられ、信仰の視点が見出されていた。

§    §

作品を前にした対話を通して、聖書の言葉やストーリー、身の回りの素材や風景に新たな視点が得られ、教会や日常で創造力を生かすヒントにもなりそうだ。クリスチャンではない人とも聖書のメッセージを分かち合える機会になる。作品販売とともに、クリスマスカードなどのグッズ販売もあり、教会や自宅での鑑賞、プレゼント用にも作品を生かせるだろう。

本展のために結成されたグループBezalel(ベツァルエル)https://bibleandartjp.wixsite.com/bezalelが主催。
発案者の服部さんのインタビュー → https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/?p=38286

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