WVJ現地スタッフ「トルコに比べ情報量少ない」

がれきに埋もれた人々を救出作業しているところ(写真提供=WVJ)

シリア国境に近いトルコ南東部で2月6日未明に発生した大地震で、1週間が経過した2月14日現在、トルコとシリア合わせて3万5千人を超える死者が出、多くの負傷者、家や建物の倒壊が出ている。各キリスト教支援団体は、現地で支援活動を開始。国際NGОワールド・ビジョン(WV)は、シリア北西部での支援事業を実施していたシリア対応事務所を中心に、発災直後から対応した。中東ヨルダンに駐在し、シリア支援事業を担当する国際NGОワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)緊急人道支援課の渡邉裕子スタッフに話を聞いた。

以下は渡邉スタッフのコメント。
─WV現場スタッフはすでにトルコ、シリア両国で支援を開始。震災前から現地で活動していたスタッフたちの働きがより緊急性を増したという感じだ。シリア国内では暖房用の燃料、車を動かすガソリンが足りず、救急車や重機も動かせず、活動ができないという話を聞く。建物はシリア北西部で2月6日現在6千棟が倒壊。今後、もっと増える見込みだ。もともと紛争で攻撃を受け、倒れかけた家や校舎に国内避難民が住んでいる所に大きな揺れが襲った。ぜい弱な状態に地震が追い打ちをかけた。
WVが支援してきたシリア北西部は国内避難民が多く、難民キャンプでは10年間、仮設テントで暮らす人も少なくない。皮肉にも、テント暮らしの人たちが家屋の倒壊を免れ、コンクリートの建物に住んでいた人たちがいちばん犠牲となってしまった。
破壊を免れた家は、今後も安全とは限らない。戦闘員が潜んでいた家などには、爆弾や危険物を隠して出ていった空き家などがあり、国内避難民一家が空き家に住み始めたところ爆発があり、子どもたちが亡くなった。建物がなく、人が立ち入ったこともない場所が地雷原だったりするので、地震から逃れて無人地帯を目指す人たちが地雷に触れる危険性があると国連は言っている。

燃料配布の様子(写真提供=WVJ)

シリアはトルコに比べ死者数、倒壊家屋数は少ないものの、被害は甚大だ。だがメディアが入れない場所で、情報がつかみにくい。これまではトルコ側から入ってくる支援物資に頼っていたが、トルコ側も被災しインフラも破壊されており、物理的にアクセスも途絶え、やっと一部が復旧したところだ。支援物資が入って来ないので、今あるもので何とかしないといけないが、ガソリンも食料も底をつき始めている。WVは今、人命に必要なシェルター、仮設テント、仮設避難所の設置などを行っている。加えて、薬品や医療用品を届けるなどの医療支援を行いたいと願っている。
シリアでは昨年9月からコレラが非常に流行しており、被災前から安全な飲料水を届けるなどの予防対策を行ってきた。だが、この地震で安全な飲料水の確保が難しい。コロナ感染は昨年12月から上昇傾向にあり、震災でさらに抵抗力が弱り、肺炎を起こしたりする人も多い。衛生状態も良くなく、感染症が広がる危険性がある。
ウクライナとロシアの戦争の影響で、食料、特に小麦の値段が高騰している。燃料価格も上昇し、経費がかさみ、支援が届きにくくなっている。多少、経費は上がっても支援は続けていく覚悟で、支援を行っている。
今は緊急人道支援を行っているが、仮設で生活を立て直した上で、最終的な復興に持っていけたらと願っている。そういった意味で、数年先まで見据えた長期支援を考えていかなければならない。
日本の皆様には、まず現地の状況に思いをはせていただきたい。内戦があるシリアは、トルコに比べて圧倒的に情報量が少ない。ニュース映像には出てこないが、国境近辺には困窮する人たちがたくさんいることを覚え祈ってほしい「あなたたちのことを忘れないよ。祈っているよ」という思いが現地の人たちの励みになる。
シリア北西部ではダムが決壊し、一部の部落が洪水に遭った。余震は今も続いている。ぜひ、災害が少しでも食い止められるように、被災した人たちに少しでも早く支援が届くように、いのちがこの先消えることのないように、祈りに覚えてほしい。─

緊急援助募金の受付はWVJ公式ホームページ(URLwww.worldvision.jp)から、「トルコ・シリア大地震緊急援助募金」へ。

2023年02月26日号01面掲載記事)