碓井 真史 新潟青陵大学大学院教授/心理学者

「大学生になったら、キリスト教かマルクスを勉強したい」。そんな思いをもったまじめな学生に最初に声をかけたのは、統一協会の学生団体「原理研」(CARP)だった。この団体は、今も昔も非常に巧みな方法で学生に近づく。たとえば、市長を招いて勉強会を開き、その写真をインターネットで公開する。市の活動に協力し、市から表彰状をもらう。この団体を、普通の学生が疑うことなどできるだろうか。
カルトは家庭にもやってくる。誠実に生きてきた主婦に、「聖書に興味はありませんか」「もっと良い家庭にしたいと思いませんか」と優しく微笑む。そんな言葉に乗せられて、彼女はカルト宗教へ。家庭は崩壊へと向かっていく。

関心のある人に教会がどれだけ届いてきたか

聖書やキリスト教に関心をもっている。良い社会、良い家庭を作りたい。そんな人たちが、最初に正当なキリスト教に出会えていたら、人生は変わっていただろう。潜在的ニーズをもった人々に、私たちの声は届いていない。
もしも統一協会やエホバの証人の人たちが、カルトの問題に気づいて、みんなでこちらの教会に来てくれたら、それだけで各教会の信者数は倍増、大リバイバルだ。そんなことを、40年前の大学生のころ、冗談めかしてKGK(キリスト者学生会)の仲間と話していたことを思い出す。自分たちの無力さを自覚しないままに。
当時も統一協会のことは社会問題化していたが、数十万人の巨大組織が揺らぐことなど現実的ではなかった。しかし今、その大激震が現実に起きている。多くの人々の祈りと努力の賜物だろう。政府が動き、マスコミが動いている。法律もできた。統一協会もエホバの証人も、動揺は隠せない。
組織は引き締めを図っているのだろう。「『宗教弾圧』と闘おう」「世間の誤解を解こう」と、信者たちに発破をかけているようだ。世間に対して、「霊感商法を組織が命じたことはない」「子どもへのムチ打ちを組織が指示したことはない」などと述べている。しかし、これらの発言に対して、現役信者たちですら、疑問を感じ始めている。明白に指示をしていたではないかと。
カルトからの脱会は難しい。カルトは恐怖で信者を縛る。熱心な人ほど、組織外の人間関係がない。すべてを組織に捧げてきた人ほど脱会は困難で、かえって熱心さを増すことすらある。しかしそれでも、大きな疑問の種はまかれた。
その種が芽を出し実を結ぶためには、何が必要か、、、、、、

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2023年02月12日号 03面掲載記事)