講演する高橋さん。左にとぅなちさん、安室さん

 

「戦争という怪物が目の前に立ち、その顔に『台湾有事』と書かれている…」。基地が集中する沖縄が直面させられている事態をどうとらえるか。「沖縄の基地を引き取る会・首都圏ネットワーク」主催の緊急集会「私たちの現在地 第2の『沖縄戦』を許すのか」が3月4日に、東京・新宿区の日本キリスト教会館で開かれた。【高橋良知】

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前半は基地引き取り論の提唱者、高橋哲哉さん(哲学者)が講演した。「各種世論調査では、戦争脅威、集団的自衛権、防衛費増額などへの賛成が多数派になっている」「防衛省の専門家がメディアに露出するなど、様々なキャンペーンで反戦、厭(えん)戦の空気を払しょくしている」「中国が2027年までに台湾侵攻する、という米高官の情報から、日本も戦争準備を加速している」など、現状を分析した。

憲法九条については、天皇制、沖縄、日米安保体制との関係を論じ、「改正反対で自足するだけでは足りない」と強調した。「護憲派の努力がなければ、自衛隊はとっくに米軍の戦争に動員されていた。だがすでに九条があっても、グローバルに戦争ができるようになった。改憲を阻止し、九条を戦争阻止に役立てたいが、同時に九条に頼らない戦争阻止の論理をつくることも必要だ」と語った。

日本にある原発や経済的な問題などから、「日本は戦争に耐えられない」と指摘。日中関係については「日中共同声明をお互い確認すべき」と提案。米国についても「日本がかつて沖縄を『捨て石』にしたように、いざとなれば同盟国でも切り捨てる」と危惧し、「このような差別に反対することも戦争阻止したい理由」とした。

沖縄出身者2人が講演に応答し、話した。安室千鶴子さん(沖縄に応答する会@さいたま)は幼少時、東京に移住した時に、「沖縄出身と言わない方がいい、という雰囲気があった」と振り返る。埼玉県で沖縄をテーマにしたギャラリーカフェを経営。文化発信を中心に活動してきた。「琉球は『武器を持たない島』として、ナポレオンも注目していた」と非暴力の意義を述べた。

とぅなち隆子さん(沖縄の基地を考える会・札幌)は18歳まで沖縄で育った。成人後、琉球語による講義を受講し、「自分が言葉を失っていた、と気づかされた」と言う。「琉球語を使うと頭が悪くなる」と幼いころから思い込まされてきたのだ。ピースボートで見た南米、アフリカの植民地的状況と重なった。「精神的な侵略もあった。コンプレックスを一つ一つ取るのに時間かかった」と述べた。

2023年03月26日号   03面掲載記事)