日本福音ルーテル教会スオミ・キリスト教会宣教師 ヨシムラ・パイヴィ

同じ「復活」のお祝いも、祝い方はさまざま。この時期いまだ冬の気配が残るフィンランドではイースターをどのように祝うのか。「クリスチャン新聞福音版」でこの4月より新連載「北欧のテーブル~いのちのパンを料理に添えて~」を執筆しているフィンランド人宣教師、ヨシムラ・パイヴィさんに聞いた。

フィンランドでは、イースターはクリスマスの次に大きなお祝いです。聖金曜日から次の週の月曜日まで4日間、国の祝日としてお休みになります。受難週には教会でイースターの劇が行われ、子どもたちも、イエス様の受難から復活までの出来事を知るようになります。

家の中にネコヤナギを置く(左上)

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聖木曜日の夕方の礼拝ではイエス様が命じられたことを覚え、聖餐式が行われます。礼拝後、聖卓からはロウソク立て、花瓶などすべて取り除かれて、黒い布をかけ、イエス様の受けた傷を象徴する赤いバラを5本置きます。聖金曜日の礼拝は、祝日なので朝。聖卓の黒い布とバラ、無伴奏の讃美歌と、雰囲気は暗く沈んだものになり、礼拝後も会衆は交わりの時を持たずに帰宅します。打って変わって、復活祭の朝の聖餐式礼拝は盛大です。聖卓ももとの様式に戻り、聖歌隊も賛美に加わります。教会によっては深夜にも礼拝を行います。翌日もまだ休日なので礼拝が行われます。
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この大きなお祝いのために、家庭ではいろいろな準備をします。家の掃除も普段より丁寧におこないます。この季節のフィンランドはまだ寒いので、自然には緑もありません。そのためイースター前に、白樺の枝を取ってきて、家の中に飾ります。暖かい場所に置いておくと枝から芽が出ます。もう一つ家の中に置いておくのはネコヤナギの枝です。イースター前には芝生の種もまきます。家の中で、例えばお皿に土を入れて、それに種をまいて暖かい場所に置いておくと、土から芝生の芽が出ます。これもきれいなイースターの飾り物になります。
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料理も特別です。受難節の期間には、普段より少し簡単な、肉のあまり入ってない料理やカロリーの高くない料理を作ります。昔は受難節に卵と牛乳も食べませんでしたので、農家ではこれらのものがたくさんたまり、受難節が終わったイースターには、卵と牛乳で作ったヨーグルト、サワークリーム、バターなどが入った料理がいろいろ作られました。イースターの肉料理は、もともとは羊で作られたオーブン料理です。羊の肉料理の他に鶏肉や魚の料理も普通です。

ロシアから伝わった「パシャ」

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デザートもイースターの食卓でとても重要です。伝統的な「Mämmi(マンミ)」は、ライ麦粉、ローストした大麦、シロップをオーブンで焼いたデザートで、牛乳かクリームをかけて食べます。ロシアから伝わってきた「Pasha(パシャ)」は、サワークリーム、生クリーム、砂糖、バターで作られ、ケーキのような形に作って、果物や生クリームで飾ります。
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子どもの頃、兄弟姉妹たちはみんな、イースターが待ち遠しかったです。一緒にきれいな飾り物を作ることやおいしいお菓子を焼くことが、とても楽しかったからです。特に私たちをワクワクさせる楽しみは、イースターの日曜日の朝にありました。母はイースターの前に、チョコレートでできたイースター・エッグや飴(あめ)などを、私たちが知らないうちに買っておき、イースター前日の土曜日の夜、私たちが寝ている間に、お菓子をきれいな袋に入れて、一人ひとりのベッドの端っこに置いてくれました。次の日のイースターの朝、こどもたちは起きると、すぐ母が置いた袋をあけて、その中にあるチョコレートのイースター・エッグを見つけて、いつも大喜びでした。
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甘いものはそんなに多くなかった時代です。このようにたくさんの甘いものをもらえるのはうれしいことでした。教会での受難劇だけでなく、子どもたちは、こんなことを通してもイースターは喜びのお祝いだということを知ります。そして、ゆで卵の殻にイエス様の空っぽのお墓を思い、卵の黄身に復活の命を見い出す中で、イースターの色、黄色と新しい緑からも、イエス様を通していただく新しい命の意味を理解していくのです。

2023年04月09日号 04面掲載記事)