支援の届きにくい難民の所へ トルコ・シリア大地震 JEA・全キ災が緊急報告・祈り会
トルコ・シリア大地震発生から2か月が過ぎた。国連人道問題調整事務所(ОCHA)の3月20日発表の報告によると、トルコ、シリア両国合わせて死者5万6千人超、世界保健機構(WHO)推定では両国合わせて2千300万人以上が被災したという。キリスト全国災害ネット(全キ災)世話人会は、日本福音同盟(JEA)援助協力委員会と共催し、急きょ4月17日に「トルコ・シリア大地震支援報告・祈り会」をオンラインで開催。全キ災の加盟団体から近藤高史氏(ハンガーゼロ総主事)、長下部穣氏(ワールド・ビジョン・ジャパン・教会担当コーディネート)が報告した。【中田 朗】
近藤氏はトルコ地震緊急支援チーム3人の一人として3月20日から4月4日までトルコで活動。▽韓国国際飢餓対策機構(KFHI)の支援活動に協力(物資配布)、▽避難者を訪ねテント設営、▽被災地の教会を訪ね支援ニーズを探る、など、町の7、8割が被災したハタイ県で主に活動した。
ハルビエでは、発災直後から千500人が暮らす避難テント村で支援活動してきたKFHIに協力。「200テントが並ぶ避難所の全テントを回って物資クーポンを配布したり、テント教室を見学した」
日本からの募金でテント100張をトルコで調達し、その中からイスケンデルンでは、地元支援グループに協力しクルド難民3家族に3張のテントを設営。「クルド難民はトルコ国内で差別を受けており、テントが行き届かない。家族全員が入れる広いテント設営のお手伝いをしたが、大変喜ばれた」
サマンダーでは、路上のテント教室を見学。「復興がいちばん遅れているトルコ最南端の町で、高校生200人、中学生120人に熱心に教える先生たち、昼食を用意し配る親たちに感動した。夏に備え、軍用の二重遮熱のテントがほしいということで、 KFHIと協力し提供することになった」
シリア国境近くの町ヤイラダウでは、シリア難民キャンプを慰問。「地震のため、コンテナ教室が避難所になっていた。子どもたちは授業ができず放置されていたので、教室を空けるため家庭用テントを贈呈した」
そのほか、アルティノーズでトルコ人牧師100人以上が集った地震特別会議に出席。ハルビエキャンプ近隣やサマンダー小学校避難所で物資配布などをし、最終日はイスタンブールに移動しイスタンブール日本人教会(IJCF)の礼拝に出席した。
使徒の働きに登場するアンティオキアでは、倒壊した教会の前で礼拝をささげたとも明かし、「異邦人教会第一号を生んだ町の悲惨な状態に心を痛めた」と顔を曇らせた。
長下部氏は、日本ではあまり報道されないシリア北西部の子どもたちの様子を中心に語った。「シリア北西部は国内避難民が多く住んでいる地域で、難民キャンプでは10年以上、仮設テントで暮らしている人が多い。そういった人たちが、さらに被害を受けた。皮肉だが、コンクリートの建物に暮らしている人たちが被災し、テント暮らしの人たちは被害から免れた」
被害は圧倒的にトルコ側のほうが甚大だがシリア北西部は欧米のメディアが入れず情報が発信されない、支援物資はトルコから入っていたがトルコが被災したためルートが遮断されている、物がない人たちがさらに困窮している状況だ、と指摘。
その中でワールド・ビジョン(WV)は、これまでもシリア北西部の子どもたちを対象に行っていた栄養、医療、教育などの働きを地震対応用に変え、スケールアップして活動しているという。「震災後2時間以内に、学校の暖房支援用に調達していた燃料を避難所に提供。病院や救助活動をする民営防衛隊にも届けた。10年以上活動をしてきた実績があったからこその速やかな対応だった。そのほか、毛布、マットレス、シーツなどの生活必需品、暖房・発電用の燃料、缶詰などの非常食キット、水タンクの支援や、現金の配布などをして、いのち、尊厳を守るための支援をしている」
課題としては、避難民キャンプの衛生環境を挙げた。「トイレ環境が劣悪で、コレラの感染拡大が懸念されている。シリア北西部だけでも6万7千人以上がコレラにかかっている(4月16日現在)。WVは地震前からコレラ予防対策として安全な飲料水を届ける活動をしているが、キャンプの人口密度が高く、ウクライナ危機の影響で物価が高騰し、食料が行きわたらず、特に妊産婦、乳幼児の栄養不良が急増している。物資調達が困難な状況にあるが、緊急人道支援から復興期にスムーズに入っていけるように、私たちも祈りつつ活動を続けていきたい」と結んだ。
報告後に質問の時間を持ち、続いてトルコ・シリア大地震で被災した人たち、支援に当たる人たちのことを覚え代表者が祈りをささげた。