5月7日号1面:「全キ災第7回会合」で藤原氏講演 〝大震災の神学〟は応答促す
キリスト全国災害ネット(全キ災)主催の第7回会合が4月25日、オンラインで開かれた。当日は、藤原淳賀氏(青山学院大学大学宗教主任・地球社会共生学部教授)が、「大震災の神学」と題して講演した。【中田 朗】
最初に、全キ災代表の北野献慈氏が、イザヤ書43書19節の御言葉を引用し、「大災害の現場を思い浮かべてみると、荒野のような場所と言える。そこは道もなくなり、飲み水も食べ物も失われている世界だ。そこで様々な救援活動が行われ、水や食べ物が届けられ、道路が引かれる。荒野に道、荒れ地に川を設ける働きではないかと思わされている。これまでは、現場の働きについて分かち合ってきたが、今回は切り口を変えて、神学的な見地から学びたい」と挨拶した。
藤原氏は、東日本大震災発生の翌年から毎年行われてきた「東日本大震災国際神学シンポジウム」に触れた。「千年に一度の大震災が起こるのを神がお許しになったのを見た時、私たちは何かしないといけないと思い、立ち上がった。昨年お招きしたアリスター・マクグラス教授(前英国オックスフォード大学教授)は、中世の間では、神がおられるのになんでこんなことが起こるのか、ではなく、こういうことは起こるものだ、と言及していた。このレベルの災害はどこの地域でも起こると相対化した。実際、今年2月に6万人近い死者を出したトルコ・シリア地震が発生した。東日本大震災だけでなく、様々な災害を視野に入れ、考察する必要がある」
その上で、藤原氏は「大震災の神学は、震災それ自体を中心とせず、その背後にある神の愛を基礎に考察したい」と語る。「神は愛をもって天地を創造された。神様は被造物に夢中で、今でも私たちを愛しておられる。そして、私たちがその愛を知り、隣人を愛していくようにと神は願われている。その愛、慈しみを何より大切な物として考察していかなければいけない」
続いて、「中間時の神学」にも触れた。「我々は、堕落と御国の完成の中間時に災害を経験している。その意味で中間時の神学だ。災害には自然災害だけでなく人災もある。原発事故はまさに人災だ。その両方に神は参与してくださる」
「大震災の神学は応答を促す」とも語った。「神学者のパウル・ティリッヒは、カイロス(時)という言葉をよみがえらせたが、東日本大震災はまさにカイロスの重要性を思い起こさせた。H・リチャード・ニーバーは『神はすでに働いておられる。我々は神に応答しなければならない』と語った。ニーバーの神学は、私たちが象牙の塔に留まることを許さない。神が天に留まることなく地に下ってくださったように、神は私たちを招いておられる」
「戦争という大災害」にも触れた。「昨年2月、ロシアがウクライナを侵攻し、戦争が始まった。戦争は火事のようなもので、一度始まると途中でやめるのが難しい。焼き尽くすまで行ってしまう。戦争では、殺人、性暴力、破壊、偽証、盗み、拷問など、あらゆる罪が現れる。絶対に戦争が起こらないようにしないといけない。そのために、教会は天と地をつなぐ生き方をすることと、蛇のように賢く、鳩のように無垢(むく)になることだ」
「教会のゴールはシャローム。天の御国を見上げながら進んでいく時、それがビジョンとなり、我々を導く方向となる。天と地をつなぐ中で現実的な対応をしていくのが教会だ。地震発生直後は応急的対応をし、同時に中長期的対応も考えていかなければいけない。これから起こる大地震への準備も必要だ。また、軍事力、同盟関係、民主主義、国際的組織、経済的相互依存など、我々の国で絶対に戦争を起こさせないための研究もしていかなければならない」と語った。
そのほか、当日は新規加盟団体としてカンバーランド長老中会の紹介、全キ災のこれまでの歩みについての報告があり、質疑応答、グループタイムの分かち合いの時も持った。
第2部では、20
22年度活動・決算・会計監査・業務監査の報告と承認、2023年度計画案の報告と承認、 世話人の選出と新旧世話人顔合わせ・引き継ぎなどが行われた。
次の会合は10月31日、対面とオンライン併用で開催される。
(2023年05月07日号 01面掲載記事)