寄稿・佐々木宏光=日本福音同盟 宣教委員会 宣教研究部門担当

今回、「地方」伝道の意義と必要について述べる上でまずは地方での働きをしておられる先生方に感謝を申し上げたい。それは、私が「地方」に関して登壇予定の第7回日本伝道会議(以下JCE7)に先だって、東北のいくつかの教会に電話した時のこと。思っていた以上に、仕事を抱えながら地域の人々の救いのためにと励んでおられる先生方の多さに私は気づいた。あるいは複数の教会を抱えて牧会をしておられる先生方もたくさんいる。これは自分ができない主の働きを、この先生方が担ってくださっているということでもある。ここに感謝を申し上げたい。

まずは「地方」の定義についての再確認だ。一般的に地方とは三大都市圏を除く地域を指しているが、人口197万人で「地方」に分類されている札幌市のような地域もある。そのため、ここで語る「地方」とは、過疎化が進んでいる地域、交通網の整備が進んでいない地域、少子高齢化が進んでいる地域を指して言う。

地方での働きは採算がつかない働きとも言えるだろう。クリスチャンが1%と言われる日本において、5キロ圏内にどれだけの人口が住んでいるかということは教会存続というテーマにおいてとても大きな問題である。牧師が御言葉の働きに専念することができずに、一般の仕事をしつつ、説教、牧会と働きを続けていくうちに、体と精神のバランスを崩してしまう。あるいは教団内からは、これだけやってきても洗礼者が起こされないのはどうなのだと言われる。働いて実がなるのであれば感謝であるが、働いても実がなかなかならないのが地方伝道の実情とも言える。

新型コロナウイルス感染症の問題が起こる前から地方の課題は取りざたされてきた。政府は2013年には地方創生に取り組み始めている。柱となる支援は①情報支援、②財政支援、③人的支援である。教団として、あるいは各個教会としてもこの取り組みから考えさせられることはないだろうか。お金と人の支援で終わり、「情報」が途切れてしまうと孤立が起こる。孤立は不信感を生み出し、対立構造へと変わっていく。地方宣教の課題の大きな一つは、この「情報共有」あるいは「情報伝達」の不足、いわゆるホウ・レン・ソウ不足にある。

地方の問題については、他にもたくさんあるが、その内容についてはJCE7において発行される書籍『宣教ガイド2023』の第四章に詳しく記しているため、今は割愛する。

 

もしあなたに「声」がかかったら

多くの問題はあるが、だからといって、きっぱりと手を引いてしまい、採算の取れる働きだけに注力しようとはならない。もしそうなら、教会の働きは一般の会社と同じ働きに成り下がる。主は採算の取れる働きだけをせよとは語られていない。パウロもまた、当時「地方」とされていたマケドニアからの叫びに応えた。今もし「あなた」にこの声がかかったとしたら、どのように応えることができるだろうか。私たちクリスチャンは善か悪かで物事を判断するのではない。神がどのようにされるのか、神がどのように考えられるのかについて、常に考えていくものであることを受けとめつつ、地方伝道の意義と必要を見つめ直したい。

2023年06月04日号 05面掲載記事)

 

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