【キリスト教学校特集】〝一匹の羊〟まで救うために 埼玉 聖望学園中学校・高等学校
ルーテル系の中高一貫校、聖望学園中学校・高等学校(埼玉県飯能市)の取り組みについて、理事長で校長の関純彦氏=写真右=と、チャプレンのマイケル・ピースカー氏=同左=に話を聞いた。
コロナ流行以前にICT教育を始動していた同校は、全生徒にタブレット端末を配布しオンラインの仕組みを作り始めるなど、感染症対策を「期せずして準備していた」。学校で通信会社と契約し、生徒の通信環境格差を解消。通信機器メーカーと共同研究し安定性も向上させた。自粛期間中も自習に任せず、オンライン授業により双方向の意思疎通を確保。教員がタブレット端末で電子教材に書き込みを入れると、生徒の端末でもリアルタイムに反映される。生徒の取り組み状況をリアルタイムで確認することもでき、行き詰まっていれば指導できる。リモート保護者会では、端末の扱いに慣れた生徒が保護者に操作を指南し家庭内コミュニケーションが活性化したなど、副産物も多い。
同校は、不登校の生徒のための適応指導教室を「カイロス」の名で校内に設置。私立や高校では他に例が少ない。保健室登校のように〝カイロス登校〟も可能としているが、困難な事情の中にある生徒は増加していた。
そこで今年4月には通信制課程を開校。全日制との間で転籍・復帰も可とした。
「カイロス」も通信制も、「これなら生徒を救えるんじゃないか」という思いに基づく。通いたくても通えない生徒の意思を尊重し、「できないものはできない、ということにはしたくなかった」「新しい解決方法があるということが大事」と関氏は語る。「卒業させてあげたい。残念な思いをさせたくない。転学の経費やストレスを負担させたくない」という担任や学校の思いも反映。ピースカー氏は、99匹の羊を残しても1匹を探しに行くような、聖書の愛の実践であることを証しした。
続いて、聖書科の取り組みや姿勢について、ピースカー氏と、聖書科講師の広瀬由佳氏に話を聞いた。
同校の聖書科には「さまざまなカラー」の講師が集まるが、「神のかたちの回復の手伝い」という点は一致していると広瀬氏は考える。
聖書科のカリキュラムは、入門、旧約、新約と進んでいくが、高校3年生の授業では、社会問題や生命倫理の考察が広瀬氏から投げかけられる。いきなりの適用で、あえて「びっくりさせる」広瀬氏だが、「中学1年生の入門でも、高校3年生のキリスト教倫理でも、言葉や視点が違うだけ」、コロナ対策やICT教育による授業スタイルの変化にも、「教育の方法論が変わったに過ぎない」とし、本当に伝えたいことは不変の神の愛であることを強調する。
一方で生徒の反応には変化があった。コロナ禍が長引くにつれ、生徒の生命倫理に関する考察には揺らぎや多様化が見られた。生徒の個人的な苦悩にも関わる授業だけに、教室での発言や対面の会話でなく、リモートや文字でなら話すことができる、といった生徒も多いという。
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オンライン化により、対面の交わりで得ていたものが欠落する、という痛みを覚えつつも、かえって、従来は隠れていた状況や、隠すことを選ばされていた思いを、顧みることができるようになった、と感じられる。対面での教育が回復しつつある今、対面とオンラインの両立という、新たな教育の形への模索を、聖書が教える愛の実践のもとに見た。【間島献一】
(2023年06月18日号 04面掲載記事)
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