生きにくさを抱えた人の伴走者に 福音バプテスト宣教団 太平チャペルキリスト教会
札幌で若い夫妻が牧会している福音バプテスト宣教団・太平チャペルキリスト教会。父親の開拓からスタートした教会は、グループホームと並行して運営されていた。福祉の現場と隣り合わせの教会はどのように歩んできたのか。
太平チャペルキリスト教会(以下、太平チャペル)は札幌市の落ち着いた住宅街にある。どちらかといえば中高年層の多い地域だ。牧師は松田聖一さん。2005年に牧師である父が開拓で始めた教会である。教会と、心の病を持った人たちのためのグループホームを同時に運営していた。
生まれは大阪だが、父の赴任地を転々とする子ども時代を過ごした。高校生の頃から映像制作に興味があり、将来はその道に進みたいと願っていた。
「大学卒業時、与えられた賜物を使いたいと考え、神学校に行こうかなと思いました。今思えば軽い気持ちでした」
その気持ちを見透かされたのか、結果は不合格。ショックではあったが導きを祈ろうと考え直す。
父の教会を手伝おうと札幌へ。若いクリスチャンの集まりに参加するようになった。その頃参加したキャンプで十字架のメッセージを聞き「十字架は自分のためだった」と実感した。07年、東京・聖書宣教会に入会。卒業後の11年、太平チャペルに就任した。
当時は会員も6、7人。グループホームを開いていたこともあって精神障害の人がメインの教会。その後、財政面や人間関係などさまざまな問題が重なり、18年にホームが解散。教会はゼロからのスタートとなる。
「解散のときはとても大変でした。いろいろなことがあって正直つらかったです。気持ちも複雑でした」
解散直前の祈祷会でメンバーと聖書の分かち合いをした。いい応答がもらえないことも多かった。でも「何か教えられたことある?」と聞くと「神様は自分を愛してくれていると分かった」「イエスが復活したあとの弟子たちの変化が印象的だった」という応答があった。「しっかり聖書を読んでいたんだ。神様はちゃんと働いてくださっていたんだ。自分のやってきたことは間違いではなかった」と感じた。リスタートだけど何も心配することはない。神に信頼して行こう、と確信が持てた。
「地域に根ざす教会」として成長
新しく始まった教会は「地域に根ざす教会」。
雰囲気もがらりと変わった。これまではグループホームの人中心だったのが、地元の人、他教会の人、集会に来た子どもたちやその家族が来るようになった。
コロナの影響で現在休会しているものもあるが、今も枝分かれした教会の牧師を務める父が協力するパン教室や、母による英会話教室も続けてきた。英会話教室で聖書のことばを聞いた子どもが、後にイエス様を信じたとわかり、みことばに応答していたんだなとうれしく思う。
教会の雰囲気が変わっても、今も、心に病や疲れを持ち、生きにくさを抱えた人たちが来る。そのほとんどが30〜50代の男性なのだそう。
「聖書から離れた価値観で生きている人は『自分が自分が』という思いが強い人もいます。そのような人に聖書の価値観や自分の意見をハッキリと言わねばならないことがあります。本来の私は物事をハッキリとは言わないタイプ。でもそのような性質を抑えてでも言わねばならないことがある、と心がけるようになりました」
牧師として、集っている人たちがイエス様とともに歩む喜びを得られるよう、その伴走者になれたらと思っている。
松田さんの得意分野である映像の世界も活用している。YouTubeでは映像制作ワークショップや人形劇、牧師夫婦の愉快な日常をひっそり(?)と伝える「業者の松P」チャンネルを配信中だ。
「この地域も若い世代が増えてきました。いろいろな世代に関われたらと。小さな教会ですが、それぞれの魂の叫びに応答できるようになっていきたい。そのためにも一緒に教会を建て上げていく人たちが起こされるようにと願っているんです」
松田さんは全く「牧師然」としていない。「知り合いのお兄さん」みたいだ。その気楽な雰囲気にホッとする人も多いだろう。居心地のいい教会にきっと成長していくはずだ。
(田口祐子)
〒002-8011 北海道札幌市北区太平11条6丁目1-11
Tel. 011・774・5477
(2023年07月16日号 08面掲載記事)