北関東神学研修センター主催のシンポジウム「地方伝道を考える―自立と連帯―」の第22回が、8月22~23日、日光オリーブの里(栃木県日光市)で行われた。感染症による中止・中断を挟んで4年ぶりの開催となった。 「ホーリネス運動と地方伝道」の題で、中村敏氏(前・新潟聖書学院長)が主題講演。日本ホーリネス教団から、根田祥一(信徒伝道者)、小野弘(相川キリスト教会牧師)、渡辺興吉(黒羽キリスト教会牧師)、田中敏信(矢板ホーリネス教会牧師)の四氏も登壇、発題した。


中村氏

中村氏はホーリネスの宣教運動について解説。山形県の楯岡や小笠原諸島の母島など、未伝地での伝道を進めた中田重治だが、後に地方伝道から都市伝道へ方針転換。その理由の一つとして、教勢拡大と教団形成の効率化が重視された、と中村氏は説明。性急な成果が求められることの難しさについても述べた。

根田氏は、「教会の外(社会)に視野を開くことが、教会の閉塞状況を打ち破る」と提言。東日本大震災の被災教会が地域社会へ出て行ったことを例に、「痛みを担い合うことは、聖書的な共同体の本質である」と論じた。

小野氏は、妻の出身地である新潟県・佐渡島での経験を語った。放置されていた教会堂を他教団から譲り受け、自ら補修したこと、年金が生活を支えたことなど、困難の中で郷里伝道が守られた経験を証しした。

渡辺氏は、鹿児島県・喜界島と静岡県伊東市で、地域の活動と協働した経験を語った。教勢拡大に直結しなかったとしても、地域への証しになったはず、との励ましが起こった。

田中氏は、4教会を兼牧している状況と工夫を紹介。牧師複数名で複数教会を牧会する「チーム牧会」について、具体的な提案や運用上の課題を示した。また、牧師は説教と牧会にとどまらず、信徒育成に励むべきでは、とも問いかけた。

ディスカッションでは、ホーリネスの「勧士」制度も話題に上った。戦前の信徒伝道者に付された肩書きが、近年になって復活。今日の牧師不足への対応にもなるのでは、と考察が深められた。


左から、山口勝政、中村、小野、渡辺、田中、根田の各氏

同シンポは今後、山口勝政氏(JECA・八郷キリスト教会牧師)を顧問、山口翼氏(中央日本聖書学院長)と赤松望氏(伝道福音教団五泉福音キリスト教会牧師)を共同代表として、活動を継続する予定だ。【間島献一】

2023年09月17日号   03面掲載記事)