国内外から多様なルーツを持つ登壇者が集った

「関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年犠牲者追悼大会実行委員会」は、9月3日、在日大韓・川崎教会(神奈川県川崎市)を会場に、「国際交流シンポジウム」を開催した。虐殺犠牲者遺族、米国からのゲストを迎え、虐殺の事実を調査する市民団体、ヘイトスピーチ問題に取り組む弁護士、川崎在住の在日コリアン、研究者による報告、ディスカッションが行われた。【髙橋昌彦】

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会の冒頭、在日中国人2世の林伯耀(リン・ハクヨウ)氏が「100年前と同じ新たな虐殺が今あるのではないか。犠牲となった彼らの恐怖、痛み、怒りをもう一度思い起こそう」と語り、全員で黙祷が捧げられた。

長年にわたり虐殺の実態を調査してきた山本すみ子氏は、「死者の声を聞くためには、その声が聞こえる自分にならなければ」と言う。横浜では虐殺は無かったとされる公式発表に対して、実際の犠牲者は3千人に上ること、地域によっては警察が民衆を組織して行ったことなどを報告。最近新たな資料が見つかったことなどを示して「政府が事実調査をすべき」と語った。

川崎市在住の発題者は、多文化共生を掲げ実践する川崎市とそこで行われてきたヘイトスピーチ・デモの実態を報告。国の「ヘイトスピーチ解消法」成立を受けて市が制定した罰則を伴う条例の施行以降、ヘイト行動は行われていないものの、ネット上では、自分に関する投稿が1300万件に上るとして、「100年前と同じ差別が続いている。〝殺し殺されない社会〟をともに実現したい」と語った。

弁護士の師岡康子氏は、「戦後の国による植民地主義への反省の無いことが、今のヘイトスピーチを引き起こし、このままでは100年前の虐殺と同じことが起こる」と言う。国連の「人種差別撤廃条約」に加入している日本が、実効性のある人種差別禁止法を実現できるよう、呼びかけた。

参議院議員の福島瑞穂氏は、「政府は当時、中国人犠牲者への補償を閣議決定した。これは公文書として今も保管されていることを政府は認めた。それならば朝鮮人犠牲者にも同様にすべき。政府による事実の隠ぺいもある。これはあくまでも政府の責任、政治の責任」と語った。

戦時中の日系ラテンアメリカ人への非人道的行為に対する米国政府からの補償を求める運動を行っているグレース・シミズ氏は、「震災後の虐殺の事実、今に続く影響は、国境を越えて記憶し、そこから学ぶべき。国際的な連帯を通じて正義のために闘おう」と呼びかけた。

2023年09月24日号   02面掲載記事)