「ヤスクニ問題めぐる戦後の歩み」振り返る

政教分離の侵害を監視する全国会議主催の公開学習会が11月25日、東京・新宿区西早稲田の日本キリスト教会館の会場とオンライン併用で開催され、憲法研究者で同代表幹事の稲正樹氏が「ヤスクニ門題をめぐる戦後の歩みを振り返って~憲法破壊を阻止し、憲法を活かすには~」と題して講演した。【中田 朗】
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稲氏は、▽敗戦後のGHQによる諸改革で国家神道が解体され、新たに宗教法人令が公布されたこと、▽だが靖国神社は戦没者の「追悼」施設でなく、「顕彰」施設であるという戦前と戦後の連続性が残っていること、▽1969年、「国・天皇のために」戦没した人々を神として称える、「英霊顕彰」という国家的イデオロギーの核心が貫徹されている「靖国神社法案」が、国会に提出されたが、宗教者を中心とした粘り強い反対運動の盛り上がりなどで、5年後に廃案になったこと、▽その後、「公式参拝」路線へ転換され、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三など歴代の首相たちが靖国神社を参拝・公式参拝してきたこと、▽またその都度市民による靖国参拝違憲訴訟が各地で起こされ、数は少ないが違憲という司法判断も下されたこと、▽靖国神社による内外の戦死者の無断合祀を問う「合祀取消し訴訟」が韓国や台湾の遺族らが原告に加わり、各地の裁判所に提訴されてきたこと、などヤスクニ問題を巡る歴史を振り返った。

稲正樹氏

小泉首相による靖国参拝後の2001年12月に設置された内閣官房長官の私的諮問機関「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」の報告書を契機とした、国立追悼施設問題についての議論をいくつか紹介。ノンフィクション作家の田中伸尚氏は「そもそも死は、生や性と同じようにきわめてプライベートな領域に属する事柄だ。勝手な意味付けをする国家に追悼させないことが、<私>に死者を取り戻し、『国のための死』からの解放・否定につながっていくのではないか」(『国立追悼施設を考える─「国のための死」をくり返さないために』)、哲学者の高橋哲哉氏は、「この施設における『追悼』が決して『顕彰』とならず、国家がその『追悼』を新たな戦争につなげていく回路が完全に絶たれていることである。具体的に言えば、国家が『不戦の誓い』を現実化して、戦争に備える軍事力を実質的に廃棄することである」(『靖国問題』)と提言。

続いて、「靖国問題」はどのような方向で解決が図られるべきかに関して、、、、、、、

2023年12月10日号   02面掲載記事)