課題図書と関連書。URLcnic.cart.fc2.comで入手可

東京電力福島第一原発事故後、「印象だけではなく、しっかり知識を得て判断できるようになろう」という趣旨で始まった福島県キリスト教連絡会放射能対策室による「放射能問題学習会」が、10年近く継続している。2か月に1回ほどのペースで55回を超え、ZOOMも活用し、遠方からも参加者が集う。「科学的な事実を知るだけではなく、倫理的にどうあるべきか考えたい」と学習会の方向性を広げつつある。

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1月11日に開かれた「放射能問題学習会」では「核のごみ問題」を、市民視点で解説する『新版 どうする? 原発のごみ1~高レベル放射性廃棄物の最終処分問題を考える~』(原子力資料情報室・原水爆禁止日本国民会議・反原発運動全国連絡会共著、2021)を読んだ。1月1日に発生した能登半島地震では、活断層の存在や避難経路の寸断などで、原発立地のリスクにも注目が集まった。同様のリスクは、原発から発生する「ごみ」の処分場についても存在する。

 「疲弊した地方」「都市と地方の格差」

今回「核のごみ」とは、福島第一原発の廃炉にともなって発生する特殊なごみではなく、核燃料サイクル全体の中で発生する高レベルの放射性廃液のことを指す。同書は、「高レベル処分場の危険性」や「どのように処分地を選ぼうとしているか」のほか、実際に誘致活動が展開された自治体の状況を伝える。「核のごみ」処分の仕組みを解説し、地層や地下水への影響、不良品、多様な廃棄物の問題、輸送・地上施設・坑道内の事故の危険性などを指摘する。

日本ではまだ「核のごみ」の処分地は決まっていない。2000年以降、段階的な処分地の選定手順(文献調査、概要調査、精密調査)を定め、文献調査の公募と、国からの申し入れ、の二方向で候補地を選ぶ。最初の文献調査で2年間最大20億円、続く概要調査で最大70億円の交付金が支給される。

20年10月には、北海道寿都町が公募、同神恵内村が国からの申し入れ受け入れを表明。11月には文献調査が両町村で始まった。同書では、首長の独断で応募ができること、住民の意見を問わずに議会で申し入れ受け入れが決まったこと、を問題視。また以前から北海道知事が調査受け入れ反対を表明していたことも指摘した。「疲弊した地方」「都市と地方の格差」の問題を挙げ、「持続可能な社会の在り方や民主主義そのものが問われ」ると主張した。

安全、経済だけか そもそもの倫理を

「放射能問題学習会」で発表を担当した大島博幸氏(バプ連盟・福島主のあしあと教会牧師)は「都市と地方の格差は必ずある。中間貯蔵施設は25年、福島第一原発の汚染水放出は30年かかるという。それらも責任持ってできるのか。細かい表現、出来事にも注意し、原発の問題を見ていきたい」と述べた。

「小諸母子ホームステイ」代表の井上儀一氏からは、社会情勢の分析報告があった。「グローバルサウスが、地域資源を先進国に収奪され、廃棄物も押しつけられる構造が世界にある。同じことが日本の地方と都市の間で起きている。福島の復興も原発事故前の構造に戻すのではなく、大資本から自由な地域循環型のコミュニティーをめざしたい。脱原発を実現したドイツが参考になる」と提案した。

「放射能問題学習会」開始からかかわる木田惠嗣氏(ミッション東北・郡山キリスト福音教会牧師)は、「疲弊した地方にとって交付金などは、苦肉の策、背に腹は代えられないという論理だろう。だがもっと別の選択肢があるのではないか。学習会を続ける中で、経済優先だけでなく、皆が幸せになる新しいシステムについても考えなくてはいけないと思うようになった。ドイツの脱原発は教会も働きかけた。福島第一原発の『汚染水』海洋放出もそうだが、科学的に安全かどうかだけではなく、そもそも事故で汚染したものを広めるのはどうなのか、という倫理の問題がある。キリスト者としても、科学だけではなく、人としての生き方を発信していきたい」

大島氏も「6年前に関東から福島に来た。原発問題とともに、何十年もかけ、次の世代に引き継ぎながら、教会は地域とかかわらないといけない。東京電力管内の首都圏の教会とも分かち合っていきたい」と話した。

調査への賛否で分断 人権の回復も課題

「核のごみ」問題のその後も展開している。原子力資料情報室研究員の高野聡氏は、1月20日、「新時代アジアピースアカデミー」主催のセミナーで「人権と民主主義の観点から見る 核のごみ問題」と題して語った。

高野氏は、、、、、、、、

「放射能問題学習会」次回は『ドイツの脱原発がよくわかる本―日本が見習ってはいけない理由』(川口マーン惠美著、草思社)を課題図書に、3月21日14時、Zoomにて開催。連絡先はMailf.s.ashiato@tiara.ocn.ne.jp(大島)。

2024年03月10日号 05面掲載記事)