被災した現代のマケドニアに派遣され

仙台駅から地下鉄で五つ目の駅「長町南」。そのアクセスの良さや便利さゆえ人気があり、転居してくる人も多い町。東日本大震災のとき、教団に海外から義援金が送られてきた。小竹向原キリスト教会(東京板橋区)の有志がそれらを被災地に届けた際、状況を見て教会として定期的な支援の継続をすることに。藤田美千代さんは、2013年の神学校卒業後、この働きを引き継ぐ形で被災した仙台の教会支援を始めた。しかし当初は流動的な支援に。藤田さんの最初の奉仕教会では宣教師の家族が送られてくることになり、カフェの奉仕で出会った人から別教会での集会の手伝いを依頼される。以後、毎月東京から通うことになる。

そのような中、県内の教会や宣教団体からなる宮城宣教ネットワークから「これまでの支援は津波の被害が大きかった沿岸部に集中しており、内陸部の仮設住宅になかなか通うことが出来ていない」という話を聞いた。「よかったら、内陸部の仮設に行ってもらえないか」と打診され、当時最高で450人が住んでいた仙台最大の、あすと長町仮設住宅で集会の奉仕をすることになった。
仮設住宅では共に支え合い助け合って、とても良いコミュニティーが出来上がっていたが、その後復興住宅の建設が進み、仮設は閉鎖。集会の参加者も次々転居していき「さて次はどうなるのか」と祈っていたところ、一本の電話が入る。「仮設が撤去されても集会は続けてほしい」という参加者からだった。「そこで仮設の近くにレンタルルームを借り、体操と短いみことばの集会を継続することになりました。初めは聖書に戸惑っていた方が時に涙ぐむ姿を見て、支援から宣教に変わってきたと感じるようになりました」

そんな折、夫が東京での仕事を辞め、仙台で転職し信徒として支える決断をした。これを機に母教会の具体的な開拓宣教計画が始まった。18年3月11日長町南伝道所が開所し藤田さんは伝道師、21年に牧師となる。「転居後すぐ、東京で奉仕していたキリスト教主義の茂呂塾保育園の園長が、仙台のYMCA南大野田こども園に連絡をとってくださっていました。挨拶に伺うと『ずっと祈り求めていた』と園長に言われ、急きょ伝道所の開所前から、職員の礼拝やキリスト教研修、週に一度保育の仕事をすることになりました」

このつながりの中で、園の子どもや保護者とも知り合い、やがて教会の子ども集会、教会学校へと発展していく。あるとき求道者から「教会でゴスペルクワイアを作ってほしい」と頼まれた。東北の人たちは歌うことが好きだ。しかし、ゴスペルの講師を仙台で探すのは非常に難しいと聞いた。宣教の思いでやってくれる人がいないか、と祈り始めた。丁度訪問したクリスチャンの知人に伝えると、その知人こそがゴスペルを指導できる人だった。こうしてクワイアの土台が整い、今も教会の大事な活動となっている。

信徒たちと。前列左から3番目が藤田牧師

31年前の御言葉の確信 今も変わらず

藤田さんの毎日はとにかく忙しい。教会をはじめ三つのこども園、保育園の奉仕、復興住宅でのゴスペルクワイア、自治会の班長、中学校のサポーターなどなど。地元の必要に仕えていく中で、信頼関係が育まれていくことを大切にしている。さぞ活動的な人か、と思うがご本人は「本当は庭で土いじりをしていたいタイプ」と笑う。神戸出身で幼少のころ教会学校へ行くが、その後は足が遠のいていた。結婚後、心の平安を保つことに人間の限界を感じ、三浦綾子の本を読んだことがきっかけとなって1993年に受洗。信仰へと導かれた。

「あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ。主が成し遂げてくださる」(詩篇37・5)。その後、教会に仕える召しを受け再度、詩篇37・5を示された。この御言葉の確信と平安は、31年たった今も、変わることがない。教会にはこども園関係の職員・保護者、地域活動で知り合った方の家族、被災した方が来ている。震災から13年経ち、弱音を吐かない東北の人たちも少しずつあの時のことを話せるようになってきた。「教会員が互いに祈り合うようになってきたことがうれしい」

使徒の働きにある、パウロが見たマケドニア人の幻のようだ、という。マケドニアの必要に応えたパウロのように、被災した人たちと関わり、イエスを現す働きをしていきたいと願っている。
「これまでの活動で自分が計画したことは何一つないのです。すべて周りから『やってほしい』と言われ、それをただ行ってきました」。自分の考えで行動を起こすことには懲りている、神の召しに仕えるだけ。全て神のご指示のままに、と話す現代の使徒に圧倒される。(田口祐子)

長町南会堂外観
仮設住宅閉鎖後の活動は今年から、あすと長町災害復興住宅集会となる

フェローシップ・ディコンリー福音教団
小竹向原キリスト教会 長町南伝道所

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2024年05月19日号 08面掲載記事)