白浜レスキューネット、児童家庭相談を開始 回復・自立のため長期滞在施設が必要
白浜三段壁での自殺防止活動で知られるNPO法人・白浜レスキューネットワークが昨年、和歌山県からの委託を受けて児童家庭支援センターの働きを開始した。「くまのっ子児童家庭支援センターのこのこ」と名付けられた相談窓口には、地域の住民から多くの相談が寄せられている。その中で見えてきた次なる課題とは?
【山口暁生】
児童家庭支援センターとは、児童福祉法に基づく、地域の相談機関。子どもや家庭のさまざまな悩みを専門家たちが支援する。「のこのこ」は和歌山県内二つめのセンターで、県南部の紀南地域全域をサポートする。センター長も務める法人理事長の藤藪庸一氏(白浜バプテストキリスト教会牧師)は次のように経緯と課題を話した。
「のこのこ」の前で藤藪氏
―当法人の活動は、前任の牧師・江見太郎先生が1979年に始めた『三段壁いのちの電話』がスタートで、その働きを僕が引き継ぎ、今までに千700人を超える人を保護してきました。しかし、自殺を防ぐには三段壁での活動やいのちの電話だけでは足りない。本当に予防するのは教育だと感じ、学習支援や放課後施設といった子どもの活動も行ってきています。
今回、0歳から18歳までの子どもと子育て家庭を支援する児童家庭支援センターの委託を県から受けることができたので、昨年5月からその活動を始めました。予想していた以上に多くの相談を受けています。
しかし、その枠組みだけでは十分ではないことも見えてきました。次の段階として必要なのは、子どもたちをかくまっていける場所、滞在していく場所なんです。養護施設と言ったほうがわかりやすいかもしれませんが、法的な養護施設というのは年齢制限であったり、いろんな制約がたくさんあるんです。でも18歳になったら誰もが自立できるわけではありません。
また親をかくまったり、家庭や親子関係を回復させていく必要もある。親子を引き離したほうがいい場合もあるし、一緒に回復していく必要がある家庭もある。家族丸ごと預かるスペースもあれば、女の子だけ、男の子だけ預かるスペースもあって、18歳で区切らないで本当に社会で自立できるまで見られる施設を作りたい。
そういうのをひっくるめて預かろうと思うと、既存の施設はどこも該当しなくなるんですよ。ということは、補助金の対象にはならないわけで、助成してもらえなければ全部自前でやるしかない。そこで寄付を募るサイトを開設したりして、資金を集めはじめています。ところが建設費用が大幅に値上がりして、全然足りない。キリスト教会の皆さんが賛同して協力してくださったら嬉しいと思っているんです―
支援サイトは、https://syncable.biz/associate/shirahama-rescue
(2024年06月02・09日号 02面掲載記事)