【キリスト教学校特集】山形 基督教独立学園高等学校 〝他者〟が鏡になって成長
「聖書」「天然」「労働」を三本柱に、全寮制での共同生活をする基督教独立学園高等学校(山形県西置賜郡小国町叶水[かのみず])。キリスト教的独立人の養成を目指すその教育は、揺れ動く社会、地球環境の中で、人の本質を浮かび上がらせている。
朝は6時に起床して、掃除や炊事・配膳の作業をし、礼拝をへて授業。草刈りや除雪、季節ごとの様々な協働作業もある。「スマホもテレビもない生活ではあるが、生徒は不便を感じていない。生徒の中には、中学校で、友人関係や教師との関係で悩んだりした生徒もいるが、『環境を変えたい』『人との深い関係をもちたい』と涙ながらに志望する生徒たちもいる」と校長の後藤正寛さんは語った。「全国各地から、生徒たちは ここでの学びと共同の生活への覚悟を決めてやってきたので、生き生きと日々を送っている」と話す。
生徒中心の部活動も盛んに行われている。ほとんどの生徒は複数の部活動に所属しており、最近では養蜂部や雑穀部などあらたな部活動を自ら作り出す動きも見られている。 「家畜や作物のケアは、生き物なので、休みはない。製パンやハンドベル、コーラスなどの活動もある。様々な学校で部活動が成り立たない、と聞くが、若者は実は内側にものすごいエネルギーがある。『共に』ということが大事。自分と違う他者と『共に』つくる活動をすることが、将来への土台になります」
「『共に』生活すると、スマホやネットと違い、ボタン一つでは関係を切れない。そこに他者がいる。その他者とどのように関係を作るかの訓練になる。他者が鏡になって、自分の課題に向き合うことにもなる。そして天を見上げ、星を見上げ、聖書で内的深さも耕される。これが生きる力となる。しかし変化には時間がかかる。挫折や弱さを経験しながら、3年間かけていきます」
「単調な仕事」も楽しめる
内村鑑三が小国伝道を呼びかけて100年、それに応えた鈴木弼美(すけよし)が「基督教独立学校」を設立して90年となる。1970年代頃までは 各地の無教会の家庭の子どもらが多かったが、その後一般のマスコミに注目され、諸教会や無宗教の家庭からも生徒が集まるようになっていった。卒業生の二代目、三代目も入学している。
全員が参加しての朝夕の礼拝のほかにも、教師による自主的な聖書研究会も複数ある。「聖書の知識、向き合い方は様々。明確な信仰を持つ生徒もいれば、懐疑的な生徒もいる。素朴な質問が本質をついていることがある。クリスチャン家庭の生徒にとっても刺激となって、聖書の本文に向き合うことになります」
教師たちの多くも学園内で暮らす。「プライベートも捧げ労するが、だからこそ、ここで働きたいという先生には覚悟がある、、、、、、、
【高橋良知】
(2024年06月16日号 04面掲載記事)