すでに規模的には西洋中心とは言えないキリスト教の現状の中で、文化、心性の問題に改めて注目が集まる。遠藤を研究し続けた著者の集大成が「遠藤周作探求」三部作として刊行された。「日本人とキリスト教の距離感を縮める」というプロジェクトを共闘した遠藤と、その盟友井上洋治神父、さらに文芸評論家の佐藤泰正の遺志を継ぐ著者の思いが込められる。

『遠藤周作 その人生と「沈黙」の真実』(山根道公著、日本キリスト教団出版局、4千840円税込、A5判)は、代表作『沈黙』への「誤解」を解きほぐしながら、遠藤の実人生と比較して考察する。『遠藤周作『深い河』を読む』(同、3千520円税込)は、『深い河』の宗教多元的、汎神論的傾向に注意を払い、「既成の宗教」に立ちながら、「排他主義」や「包摂主義」にも気を付け、「開かれた霊性」を生きる姿勢に注目する。『遠藤周作の文学とキリスト教』(同、4千180円税込)は、各地での講演を収録し、三部作を要約するものとなる。

棄教でも殉教でもなく、生き残り続けた「潜伏キリシタン」たちの信仰の真偽について、近年論争がある。1622年の「元和大殉教」から400年を記念した『キリシタン1622 殉教・列聖・布教聖省 400年目の省察』(川村信三・清水有子編、キリシタン文化研究会監修、教文館、3千520円税込、四六判)では、前半二部で「元和大殉教」にまつわる絵画や資料を詳しく紹介、後半三、四部で日本における「受容」に迫る。三部は「潜伏キリシタン」の信仰について。四部では信長、秀吉、家康の「自己神格化」について、キリスト教の影響を探るが、神道、仏教各派のせめぎ合いも明らかになる。

『東北キリシタン探訪』(仙台白百合女子大学カトリック研究所編、教友社、2千420円税込、A5判)は、女性学、博物学、文学、教育学、神学の専門家の知見が動員された。伊達政宗がローマに派遣した「慶長遣欧使節」については、それを題材にした数々の詩、劇、文学、漫画を分析し、日本と西欧の緊張とそれを超える視点を探る。「殉教」についての論稿では、福音は社会通念を超えるものであるが、愛と復活が希望になると解説した。

 

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