【高齢者特集】口に出ない〝心の声〟を傾聴 沖縄 北中城若松病院
特定医療法人アガペ会 北中城若松病院(沖縄県中城郡北中城村)では、おもに高齢者を対象とした病院と、付属する組織「チャプレン室」とが、分かち難い一つのわざをなしている。
若松病院の高齢者医療の中核に、認知症ケアがある。認知症には、言動ともに意思表明が難しくなってゆくという苦悩がある。その苦悩もまた伝わりにくい。そうした「スピリチュアルペイン」のケアを行う組織がチャプレン室だ。現在では5人が在籍。若松病院ではチャプレンの働きを、「療養者を支える」、「療養者の家族を支える」、「職員を支える」の三本柱だとしている。
療養者個別のケアは、チャプレンの働きの中核をなす。意に反した入院にふさぎ込む人や、意思表示が暴言になってしまう人。キリスト教を拒否する人や、「御願(ウガン)」(台所の神や先祖崇拝に関わる沖縄の儀礼)ができず平安を失う人。戦争の記憶に苦しめられ続け、自分が生き残ったことへの罪悪感とともに生きてきた人。人の数だけあるスピリチュアルペインに、チャプレンは常に耳をすます。1日中、病棟内を歩き続ける人がいれば、ともに歩き続ける。口には出ない心の声を、行動をもって傾聴しているのだ。
チャプレンはカンファレンス(医療機関で、医師・看護師などスタッフが行う定例会議)のメンバーにもなっている。キュア(治療、cure)とケア(癒やし、care)とが、情報と目的を共有していることの表れだ。チャプレンは、療養者の漠然とした不安を、傾聴や本人の様子から感じ取り、それを会議で共有する。それを受けて看護スタッフが、療養者の本当の求めに対処できるよう一役を担う。
チャプレンのケアには、療養者の家族を支えることまで含まれる。患者との関係が壊れていた家族が、スタッフの献身的な姿を見て、関係を回復したこともあったという、、、、、、、
(2024年07月14日号 05面掲載記事)