「人権は幸せに生きる権利です」と語るネフセタイさん

今も続くイスラム組織ハマスとイスラエルの戦争。ガザ地区保健省8月15日の発表によれば、イスラエルのガザ報復攻撃により、パレスチナ人犠牲者は4万人を超えた。その大半は子ども、女性、高齢者だという(イスラエル側死者は8月7日現在千900人)。このイスラエルの武力攻撃が止まらない背景には何があるのか。昨年10月以降、元イスラエル兵士のダニー・ネフセタイさんは、「武力では平和は訪れない」と、教会関係も含め各地で反戦・平和をテーマにした講演を行い、その数は100回を超えた。そのネフセタイさんが8月19、20日、長野県上田市で開かれた「第31回信州夏期宣教講座」で講演した。

講演最後に必ず映し出すハートマーク

イスラエル生まれのネフセタイさんは、日本に来て43年。妻は日本人だ。木製家具作りが本職で、埼玉県の秩父にある木工房ナガリ家で注文家具などの創作活動を行いながら、反戦や脱原発をテーマに講演活動を行ってきた。『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』(集英社新書)など、著書も3冊出版している。
同講座の1回目では、「外国人の目に映る人権」と題して講演。ネフセタイさんは「人権を大切にすれば、600万人が殺されたユダヤ人ホロコーストも今のガザの戦争もありえない。なぜなら敵にも人権はあるから。人権を無条件に守るならパレスチナ人を殺せないはず。だがイスラエルは『人権を無条件に守る』から『イスラエルを無条件に守る』に置き換えた」と話す。

ネフセタイさんの著作

「スローガンは『国のために死ぬのはすばらしい』。イスラエルの子どもはこれを学んで大人になる。どこの小・中・高校にも、戦争で亡くなった人の名前が刻んだ碑がある。校庭には軍が使った大砲や戦闘機が置いてある。それを見て、いつか自分も国を守らなければという気持ちにさせる」
「昨年のハマスの攻撃以降、イスラエル人の8割が『ガザの人々の苦しみを考える必要はない』と答えた。イスラエルの女性大臣は、『軍によるガザの破壊を誇りに思う』とも発言した。このように、戦争は人権を忘れさせてしまう」
「人権とは、幸せに生きる権利のこと。戦争はパレスチナ人の幸せを奪うことになる。次世代が幸せに生きる権利のため、私たち大人がいちばん使わなければならないのは〝ハート〟です」(次号に続く)【中田 朗】

講師推薦者の金道均さん

「信州夏期の学びと重なる」

ネフセタイさんを講師に招いた経緯を、同世話人会メンバーの金道均(キム・ドキュン)さん(同盟基督・塩尻聖書教会牧師)に聞いた。
2014年4月、短期宣教師として埼玉県にある教会で奉仕していた時に出会う。日本在住のユダヤ人と関わりのあるグループで、ペサハ(過越祭)のイベントを開催。その時、ネフセタイさんが妻と一緒に参加。以後、手作り家具展示会に招待される、その時に行われた講演「原発危機と平和」を聞く、家族で作った秩父のログハウスに招かれる、SNSでつながるなど、親交を深めた。

金道均さん

昨年10月、パレスチナで戦争勃発。イスラム原理主義組織ハマスによるイスラエル襲撃に対し、イスラエルもガザ地区への空爆を開始。その戦争は今も続く。それに伴い、ネフセタイさんは「武力で平和は訪れない」をテーマに各地で講演するようになった。
同じ頃、昨年30周年を迎えた信州夏期宣教講座の世話人会では、これまでの講演記録を振り返ると共に、今後何を目指していくか話し合っていた。その中には、牧師となった金さんもいた。話し合いでは、「クリスチャンの中だけで話すのも大事だが、今まさに起きている戦争、平和について活発に活動している人を招き、話を聞いた上でクリスチャンは何を目指していくのか考えたらどうか」という意見が出た。その時、金さんの脳裏に浮かんだのがネフセタイさんだった。
金さんは世話人会でこう提案した。「10年間、SNSや本で発信するダニーさんのメッセージをチェックしてきた。その内容は、信州夏期宣教講座の学びと重なる部分が多い。ダニーさんの話を聞き、その話をどう生かせばいいか討論したら、よい学びになると思う」。すると、「皆、前向きに考えてくれた」。早速、講演と翌日の討論会参加を条件にネフセタイさんに講師依頼のメールをしたところ、「5分も経たずにOKの返事が返ってきた」。
「『いつでもどこでも行きますよ』の言葉に甘えさせてもらった感じですね」と答えた。

2024年09月08日号 01面掲載記事)