【大宣教命令の現状報告を読む2】若者へ意識向け、若者の関心知る 記・佐々木宏光
9月22日から、ローザンヌ運動の第四回世界宣教会議が韓国で開催される。すでにこれに向けたデータブックとしての「大宣教命令の現状報告」(以下「報告」)がウェブで公開された(URL: https://lausanne.org/report )。世界のキリスト教動態、世界の新しい潮流を10の問いを切り口で紹介し、統計データや論考が提示する。
日本でも昨年、第七回日本伝道会議の開催に合わせ、二つのデータブック『データブック2023』、『宣教ガイド2023』が発行された。それぞれの担当者に「報告」を読んでもらい、日本と世界の宣教をつなげて考察する。
2024年9月に韓国ソウルで開催される予定のローザンヌ世界宣教会議に先立ち、大宣教命令の現状が報告されました。全レポートは8月に公開され、ダウンロード可能です。
私は第七回日本伝道会議で、地方宣教についてのブースを担当し、多くの意見をいただきました。ローザンヌのレポートには、特に関心を持っていた地域的な考察がまだ公開されていないものの、他にも興味深いデータが幾つか含まれています。特にサステナブル、つまり持続可能性とデジタル化に関するテーマに深い関心を抱きました。
持続可能に関して、経済、医療の格差、精神的な問題に及ぶ課題は重要です。2020年の調査によると、アメリカの牧師の23%と信徒の19%がメンタルヘルスの問題に苦しんでいると回答し、牧師の49%が自身の状態を信徒に話さないとしています。アジアでは47億人中、15億人以上がうつ病や不安障害に苦しんでいるとされています。クリスチャン向けのメンタルヘルスリテラシーをオンラインで学べるリソースの提供もされいるとの情報がレポートには記載されていました。
デジタル化に関しても興味深い内容があります。かつてグーテンベルクがもたらした活版印刷は贖宥(しょくゆう)状(免罪符)の普及に力を与えました。これは間違った情報が急速に広まっていった証しでもあります。ただ、その後ルターの宗教改革により、ルターの主張した内容と、翻訳された聖書もまた、活版印刷によって急速に広まり、当時の暗闇の世界に光をもたらすこととなりました。技術の進歩により、誤った情報が広がることもあれば、正しい情報がさらに勢いを増して広がりを見せていくこともあります。デジタル技術に対して、忌避感を抱いている人は決して少なくはありません。しかしデジタル化の波は確かに私たちの生活を変えています。時代の変化を私たちは知る必要があるのです。
ソーシャルメディアの利用率のデータも記されていました。SNSの平均利用時間は世界において1日平均2時間20分を記録しています。勉強を1時間することや、聖書を1時間読む、あるいは1時間祈ることは難しくても、SNSを1時間利用するというのは簡単に行ってしまう時代です。さらにデジタル化が宗教心の衰退を加速させていることと、世俗主義、無神論の認識の高まりが激化していることが指摘されています。教会もまた、主に伝道と教会の成長のためにデジタルツールを用いていますが、弟子訓練、弟子育成のためには用いていないとあります。ただし前提として、すべてデジタルが正しいという意味では無く、対面における学びの有用性があることも同時に指摘されていることを付け加えておきます。
若者への意識をどれだけ向けているのかということを続けて考えさせられています。日本ではコロナ禍で「顔パンツ」という言葉が流行りました。マスク姿が長期化したことにより、素顔を見せることに抵抗を感じる人が増えたのです。特に若者においては、ニキビなどが嫌で隠したいと言う人が多く、10~20代の男女、30~40代の女性ではマスクを外さない、外したくないと言う人が半数を越えたというデータもあります。世代が変わると常識も変化します。
日本では少子高齢化社会に既に入っています。もちろん高齢者に対する伝道はとても大切です。そして若者もまた大切です。かつてうるさいからという理由で、子どもの遊ぶ場所を潰してしまい、子どもの声が聞こえなくなってしまったことを今になって嘆いている声があがっています。そこまででは無いにしても、教会で他の人に合わせるあまりに、エアコンが弱い室内でじっくりと聖書を学ぶ若者がどれくらいいるのでしょうか。あまりにも無関心に若者に押しつけてはいなかっただろうかと言うことを考えさせられました。若者はオンラインの学びが出来るということはメリットでもあります。移動しなくてもいい。こちらがエアコンの暑さ寒さに対応しなくてもいい。用いていくならば、必ず助けになるでしょう。
JEA(日本福音同盟)宣教研究委員会で行ったコロナ禍での調査において、オンライン化で伸びた教会がありました。主に首都圏の教会です。電車での移動があり、祈り会に集うことが出来なかった若者が、オンライン化により、聞くだけでも参加できるようになったという声がありました。ローザンヌのレポートで、デジタル時代の宣教においては、特に弟子訓練と若者への働きかけが課題とされています。特に日本では毎日の祈りの年齢差が29%の開きがあります。このデータはクリスチャンだけではなく、仏教や神道、イスラム教をも含んだデータであることを付け加えておきますが、いずれにしても、若者の祈りの意識が低い傾向が見られます。
これらの課題は私たちにとって大きな挑戦ですが、SNSを悪者だと決めつけず、若者がどんなことに関心を持っているのかを知り、祈りの大切さをどのように伝えるのかを模索することが、今後の宣教活動において重要な課題だと言えるでしょう。
記・佐々木宏光(ルーテル同胞・愛子〔あやし〕中央キリスト教会牧師)
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