4月17日号紙面:リビングバイブル全面改訂 聖書の全体像をまるごとつかめるように
2016年04月17日号 1面
「わが子に理解できることばで、みことばを伝えたい」という、アメリカのひとりのクリスチャン編集者の思いから生まれた『リビングバイブル』。1971年に英語版が発行されて以来、多くの言語に翻訳され、英語版だけでも4千万部以上が発行されている。日本でも日本語版リビングバイブル委員会の翻訳により、75年に新約がいのちのことば社から出版されて以来、累計135万部を超えている。そのリビングバイブルが、このたび全面改訂をして出版された。
「まだ何もなかった時、神は天と地を造りました。地は形も定まらず、闇に包まれた水の上を、さらに神の霊が覆っていました。」
今回全面改訂されたリビングバイブル「創世記」の冒頭である。今回の改訂は、「さらに読みやすい『リビングバイブル』を目指して」、次の方針が取られた。①意訳(言い換え)部分を、よりわかりやすく、適切な表現にする。②できるだけ、日常よく用いる言葉・表現を使う。③敬語、読点を少なくする。④聖書独特の用語や理解の難しいことばに、注を加える。⑤会話の表現を落ち着いた調子に変える。
今回の改訂作業の中心となった編集者の鴻海誠氏は、「聖書の全体像をつかめるように、読者がリズムよく読み進めることのできる文章を意識した」と語る。「聖書翻訳には歴史がありますし、日本では新改訳聖書、新共同訳聖書が多くの教会で礼拝の公用聖書として使われ、今も新しい翻訳の作業がなされていますが、原典、原語に忠実であろうとすることで生じる、現代の我々にとっての読む上での困難さというものは、どうしてもあるだろうと思います。特に旧約聖書は読むことに時間がかかり、なかなか最後までたどり着かない。でも、新約で示される救い主の贖いの行為が分かるためには、どうしても、旧約聖書の様々な物語を通して表された神様の人間の罪に対する怒りと、それでも妬むほどに人間を愛して何とかして救おうとされる神様というお方を理解し、心で感じることが必要でしょう。そのためには、疲れずにスピード感をもって読めて、聖書のメッセージがまるごと伝わることが大事だと思い、そうなるようにと心がけました」
改訂版の新約は、2011年に先行して出版されていた。それ以降、旧約はいつ出るのか、という問い合わせが相当数あったのだという。「もともと英語では『子どもが読んでわかるように』という意図で作られたものですが、実際40年近い歳月を経て、幅広い世代に読まれているのだと思います。それもやはりクリスチャンの方が読んで下さっているのでしょう。私なども長年聖書を読んでいてもいまだに『いったいこれはどういう意味なんだろう』と思うことがあります。そんなときに、リビングバイブルで読む、というような使い方をしている方もいるのではないでしょうか」
日本人は識字率も高く、教育水準も高いが、全体的に読解力などの面で低下しているのも現実だ。「日本の古典文学である『源氏物語』など、読みたいと思っても原文で読めるのは研究者だけです。でも現代の作家が現代語に訳してくれれば、私たちはその世界を味わうことができます。原語に忠実な翻訳聖書は、真意を正確に理解するために当然私たちには必要です。その一方で、リビングバイブルを通して聖書のメッセージが分かりやすく伝わり、それをきっかけとして真理に至る道を見出して下さる方が起こされればと願っています」