2017年05月21日号 4・5面

大礼拝堂
光と木の香あふれる
大規模木造建築新会堂完成

広い敷地にのびやかに建つ新会堂「グローリア礼拝堂」は、キリストの生まれた馬小屋に因んで、木造の馬小屋をイメージして設計された。クリーム色の鋼板の壁には、巨大な荒削りの十字架が付けられている。シンプルな外観にふさわしい、キリストの愛の本質を表現した十字架は、訪れる人々に礼拝堂の品格を伝える。
広い吹き抜けのエントランスは、たくさんの窓から差し込む光でまぶしいほどだ。新会堂は窓が多く、全館光が豊かにあふれている。木の香りに満ち、ぜいたくなほど広い空間。木の床は温かく心地良い。見上げると2階のゆるやかに湾曲したバルコニーの造形が美しい。壁には画家で泉南聖書教会(大阪府泉南市)牧師、大寺俊紀氏による連作「天地創造の6日間」が飾られている。
大規模木造建築の特徴を目の当たりにできるのが大礼拝堂だ。複雑に組み合わされ、張りめぐらされた木組みが迫力がある。天井高12~13mだ。まるで森のような木々の連なり。漆喰の白壁。自然の力を感じさせる。小礼拝堂
収容人数約400人。ステージの正面はガラス張り。その向こうに見えるのは、やがて自然の錆で風格の増す鉄骨の十字架。正面壁面はほのかにピンク色を帯びたエルサレムストーンを配して、聖地エルサレムを表現している。教会の長老会はこの美しい石の壁を「主の栄光にふさわしい」と喜んだ。
教会の創立70周年記念誌の中で、赤江牧師は礼拝について次のように述べている。
「私たちの礼拝は『神中心』の礼拝であり、『礼拝者中心』の礼拝であってはなりません。私たちが喜ぶ前に、神ご自身が喜ばれる礼拝であり、それが私たちの喜びとなる礼拝でありたい。このような礼拝理解の中で生き生きとした感動的な礼拝をささげることが私たちの大きな願いなのです」
この願いを実現する、力強く荘厳な礼拝の場が完成した。西大寺キリスト教会全景

子どもも大人も「よく学ぶ教会」
地域の人も楽しめるプログラム提供

礼拝堂2階に母子室がある。ここは0歳から3歳の幼児とお母さんのミニストリーを開く部屋でもある。教会では敷地内でモンテッソーリ教育を行うサムエル幼児園を運営しており、入園前の子どもたちと保護者のための導入教育をする場所になる。
大礼拝堂を左手に広い廊下を隔てて、応接室と牧師室、そしてオール電化の厨房がある。食堂は多目的ホールの役目も果たす。地域の人が参加できるプログラムもあって、例えば月1回開く「フライデーコラーレ」という集会は、子どもからお年寄りまで、スイーツを味わいながら音楽を楽しむというものだ。
教会は大人も聖書教育をしっかりと行うことを教会形成の柱としている。この部屋は大人と子どものための学習の場にも使われる。
そうした教室は2階にも、パーテーションで隔てれば4室になる分級室として設けている。幼稚科から成人科まで「よく学ぶ」教会のための大切な場所だ。
少人数の礼拝のための小礼拝堂もある。日曜日の礼拝は4回。ここは朝6時からと9時から、そして午後7時からの礼拝に使用する。グローリア礼拝堂全景
さらに宿泊用のシャワー付き和室も設置した。琉球畳を敷いた快適な居室だ。
階段を下りた先の庭は、ちょうど礼拝堂正面に当たる。オリーブやアーモンド、ミルトス、ブドウなどを植えた「聖書の庭」で、成長すると豊かな緑が礼拝堂のガラスを彩るようになる。

木材の能力最大限に活用した構造
キリストの馬小屋のイメージ実現

新会堂は計画当初は鉄骨造の予定だったが、東日本大震災後の鉄骨資材の高騰により、木造に変更することになった。設計した株式会社アトリエベー(神戸市)代表取締役の三宗司郎さんは、イスラエルの名誉領事も務めるクリスチャン建築家だ。
鉄骨造が不可能なら、唯一可能なのは木造。それなら木造の馬小屋のイメージを実現したいと考え、構造設計を国立代々木競技場などを手掛けた構造設計第一人者の川口衞さん(株式会社川口衞構造設計事務所代表取締役・東京都)に依頼した。
三宗さんは設計について「地元材を使って地元の職人さんが施工可能なように、一般住宅で用いる長さ4mまでの材を用いた純木造建築が実現しています。施工は木造建築を得意とするプロズジャパンが担当いただき、施工指導を竹中工務店OBの秦力氏にお願いし、万全の体制をしくことができました」と、述べている。
川口さんは三宗さんのアイディアこそ最適だと思ったと、振り返っている。
「この発想は1910年代にドイツが未曽有の経済危機に陥ったときに、賢明な技術者たちが開発した『新興木構造技術』の発想と同じ原点に立つ考え方であったからです」赤江弘之
「その考え方は、接合部にだけ少量の鉄を使うことにより、木材の能力を最大限に活用した構造を造ろう、というものです。この技術は小サイズの木材を接合して、それまでは木造ではとても無理だと考えられていたような大きな空間を生み出すことのできる、合理的で、経済的な構法に発展し、世界中に普及しました」
さらに、今回の設計を通して教会の新会堂建設にかける、純粋でひたむきな情熱を感じたとも述べている。
施工した株式会社プロズジャパン(岡山市)代表取締役の河野光章さんは「新会堂は前例のない特殊な大規模木造建築物です。その構造は複雑さを極め、図面は私たちが今まで経験したことがないほど膨大なものになりました」と振り返る。現場に通うたびに、教会関係者や幼児園やチャーチスクールの子どもたち、高齢者施設「あい愛の郷」の人々からも掛けられる期待の声に力を得て、教会と設計者の熱い思いに応えるべく全力を尽くした。
「世間では、人と人とのつながりが薄れてきていると言われ続けています。しかし、ここ西大寺キリスト教会を取り巻く環境は、そんな世の中の風潮とは無縁です。ここは幼い子どもから高齢者の方まで、お互いが上手につながり合い、元気で活気のある雰囲気であふれています。私は、これこそが西大寺キリスト教会の貴重な財産であり資産であると思います」広い廊下
新会堂建築はキリストの愛の大きな証しになった。四十数年前に当時の若者によって掲げられた千人教会のビジョンを継承しながら、教会は2000年に教会新長期計画を立ち上げた。新会堂建設事業はプロジェクトの大きなチャレンジだった。ひとつひとつ壁を乗り越えて、大勢の人々の支援を受けて、着々と神の計画は進んでいる。
西村敬憲牧師は「このグローリア礼拝堂は、40年前の若い人たちが思い描いたものでもあります。さらに現在の若い人たちが思い描く次の未来を形成する場として、これが用いられていくことになるでしょう」と、期待する。
赤江牧師は使徒2章17節を掲げてこう語る。「主イエスは、大きい教会を建てるようになどとは一言もおっしゃっておられません。しかし主は大命令(マタイ22・37~40)と大宣教命令で(マタイ28・18~20)で、神の御旨と、そのご命令を実践して宣教する結果として、教会が成長することを願っておられます。また、私たちは親教会の千人ビジョンと並行して瀬戸内ベルトライン計画で10教会の開拓に取り組んできました。そして、今も大きい神の幻と夢にあふれた教会形成を目指し続けているのです。『この町には、わたしの民がたくさんいるから』(使徒18・10)とのみことばを信じて!」。ここからさらなる宣教拡大に挑む。
▽西大寺キリスト教会=〒704- 8191 岡山市東区西大寺中野543ノ2 Tel 086・943・7552 Fax086・943・7521 Eメールinfo@scch.jp
食堂明るいエントランス