2017年06月11日号 07面

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 今年はプロテスタント教会の発祥につながる宗教改革から500年。その中心人物であるルターゆかりの地を訪ねるドイツツアーを、昨年神戸ルーテル神学校が企画した。10月31日の「宗教改革記念日」をはさんで、10月23日から11月4日の日程で催行された「宗教改革500周年記念ドイツ旅行」を通して、信仰者は何を見、何を考えたのか。ツアーに参加した前川隆一氏の旅行記を掲載する。

 出発−10月23日(日)

 “時代の扉を開いた出来事”

 関西国際空港から、イスタンブールへ向かう飛行機に乗り込みました。イスタンブールを経由して、フランクフルトへ向かう長い旅路の始まりです。旅行の間、少し毛色の変わった本を読むのもいいかと思い、司馬遼太郎著『関ケ原』という本を持って行きました。「天下分け目の関ケ原」と言うように、日本の歴史を大きく動かした出来事、それが、関ケ原の戦いでした。でも、それよりはるかに大きな出来事、世界の歴史を変えた出来事、それが、ルターの宗教改革の出来事でした。 1517年、ルターは、ヴィッテンベルク城教会の扉に95箇条の提題を打ちつけました。それは主に、当時のカトリック教会が、教会の権威を誇るために建造した壮大な大聖堂建造の費用を賄うために、人々に売りつけていた免罪符に抗議する内容でした。ルターは、当時の教会が、聖書の本質からずれてしまっていることを指摘し、それを正そうとしただけでした。けれども、ルターの貼り出した提題は、大きな波紋となって広がり、やがてそれは、中世から近世へと時代の扉を押し開いていく出来事へと発展していきました。

 また、カトリック教会から破門されたかたちで生まれたルーテル教会は、後に続々と生まれる新教、プロテスタント教会のはしりとなっていきました。さらに、ルターの宗教改革運動に刺激されて、カトリック内部でも改革運動が起こり、その中から生まれたのがイエズス会という修道会であり、そのイエズス会から日本に派遣されてやって来たのがあのザビエルでした。

 飛行機の中では、今回のツアーの最高齢、88歳の近江さんというおばあちゃんとお隣になりました。4年前に洗礼を受け、1年前からホームに入っておられるとのことですが、お茶目なおばあちゃんで、近江さんが「ドイツに旅行に行って来ます」といった時の、ホームのみなさんのびっくりした顔が目に浮かぶようで、何かホッとさせていただく出会いとなりました。

 ヴォルムス−10月24日(月)

 “我ここに立つ”

 24日は、お昼前にフランクフルトに到着。途中、ドライブインで昼食をとり、一路ヴォルムスへ向かいました。ルターがヴィッテンベルク城教会の扉に95箇条の提題を貼り付け、宗教改革の口火が切られたのが17年。ヴォルムスは、それから4年後の21年、ルターがローマ帝国議会に召喚され、主張の撤回を求められましたが、「聖書によって反証されない限り、撤回できません。わたしの良心は、聖書にとらえられています。我ここに立つ。これ以外に、なすことはできません。神よ、わたしを助けたまえ」という有名なことばを発した所です。

 ルターが召喚され尋問を受けた場所は、今は残っていませんでした。けれども、当時の議会が行われた場所の手前に位置していたとされている大聖堂に案内していただき、その偉容に圧倒されるとともに、ルターがどれほどの巨大な権力に一人で立ち向かって行かなければならなかったか、ということを思わされました。

 けれども、そのような当時の権威を象徴するようなカトリック教会の存在とは裏腹に、以外にもヴォルムスの町の人々は、ルターのことを大歓迎したようです。それは、ルターの時代の少し前に発明された印刷技術により、ルターが書いた『キリスト者の自由』が広く人々に読まれていたからでした。人々は、ルターの中に新しい時代の到来を感じ取っていたのでした。

 当時、ルターが召喚された議会跡は、現在公園になっており、そこには有名なルター像が建てられていました。ルターを真ん中に、ルターを支えたフレデリック賢公、ヘッセン公フィリップスの像。また、ルターの足元には、ルターに先駆けて宗教改革に取り組もうとした4人の人物の像が建てられていました。そのような先達の存在、協力を惜しまなかった2人のお殿様、印刷技術の発明、いろいろな要素が整えられた上で、あの「我ここに立つ」とのことばが発せられたのでした。(つづく)

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