12月3日号紙面:東アジア・ユダヤ人伝道カンファ 世界の事例を和歌山で共有 「日本で実践できることある」
日本を訪れる外国人観光客は近年増えてきた。その中にはユダヤ人がいるかもしれない。ユダヤ人伝道について、東アジアならではの可能性があるという。2017年東アジア・ユダヤ人伝道カンファレンスが、11月13〜15日に和歌山市の和歌山県民文化会館と和歌山ルーテル教会を会場に開かれた。ローザンヌ・ユダヤ人伝道協議会(LCJE)日本支部が主催、後援は日本ローザンヌ委員会、国際協力団体はLCJE韓国支部。日本、韓国、オーストラリア、中国、香港、フランス、イスラエル、韓国、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、台湾、英国、米国から、ユダヤ人伝道に携わる参加者約110人が集結した。【藤原とみこ】
LCJEはユダヤ人伝道団体の世界的な情報交換ネットワーク。1980年に開催されたローザンヌ世界宣教協議会の分科会の一つとしてスタートした。日本支部設立は94年。 11月16日には大阪公開フォーラムが、大阪市中央区の北浜インターナショナル・バイブルチャーチで、18日には東京公開フォーラムが、東京・千代田区のお茶の水クリスチャンセンターで開かれて、メイン・カンファレンスのプログラムを分かち合った。
16日は、シオンとの架け橋代表の石井田直二氏が進行。LCJE日本支部代表で和歌山ルーテル教会のチャールズ・クリンゲンスミス主任牧師がメイン・カンファレンスの報告をした。
「日本のキリスト教の歴史は、日本人に福音を届けることばかり考えてきた歴史。しかし、私たちは日本の宣教の視野を広げたい。皆さんは日本にいて、よく外国の方に会うことがあると思う。その方たちがどこから来ているのか、あまり考えることはないかもしれないが、もしかしたらその人はユダヤ人かもしれない。福音は世界共通、全世界の人のためのもの。その福音は、ユダヤ人から始まった。私たちが信じるメシヤはユダヤ人。聖餐式や祈りなど、すべてユダヤ式。私たちが持っているもっとも良いものは、ユダヤ人から来ている。イエス様はその筆頭。私たちは、人生で受けたもっとも良いことを、出どころである民にお返ししなければならない。イエス様は言った。『救いはユダヤ人から来る』と。今日、アジアにいる多くの人々が、そこに住むユダヤ人に福音を届けようとしている。どうか、今日学んだことを教会に持ち帰って、ユダヤ人伝道のために何ができるか考えてください」
LCJEカンファレンスを念願の地元和歌山で開催できたことを喜び、「多数の国の人々と非常に中身の濃い交流のできた3日間だった。多くの人によって、みことばによるユダヤ人伝道がなされていた。それは、私たちの心、人生を分かち合う伝道。神学的というのではなく、温かな交流から生まれる伝道だ。伝道するために必要なのは、新しい仲間や助け。そのために今後の可能性について実践的な話ができたと思う」と、振り返った。
基調講演はLCJE国際コーディネーターでロシア系ユダヤ人友の会代表のジム・メルニック氏。
「福音はユダヤ人から始まり、それによって私たちの人生が変わったということを、ほとんどのクリスチャンが理解していないのではないかと思う。ドイツのある教団は、『ユダヤ人伝道はしない。クリスチャンはそのように召されていない』と言ったが、それは違う。最大の反ユダヤ主義は、福音をユダヤ人に届けないことだ。私たちはユダヤ人伝道の働きが、アジアに広がることを願っている。今回のメイン・カンファレンスでは、多くの参加者からユダヤ人伝道への強い情熱を感じた。神様はアジアの人たちに、特別な使命を与えられていると思います」
「世界中で伝道している人たちのために祈って」と勧めてこう述べた。「皆さんの教会に神様の祝福が臨むという、神様の仕組みがある。聖書には原則がある。『私は、私の民を祝福するものを祝福する』と。皆さんは、ユダヤ人のために、またユダヤ人に伝道している人たちのために祈ることができる。私たちは世界中をカバーするネットワークを作りたい。そのためにアジアはとても大切な存在。アジアの人々は、西洋人とは違うものを持っている。ホロコーストや宗教裁判等に関わった西洋人は、ユダヤ人にとって“敵対する人々”であった歴史がある。しかし、アジア人はそれに含まれない存在。神様はアジアの中から宣教の兵士を起こしておられる。日本から、韓国から、中国から、ユダヤ人のための宣教師が起こされることを祈りましょう」
メイン・カンファレンス2日目、3日目の報告では、ヨーロッパを拠点に150年以上ユダヤ人宣教活動を行っているクリスチャン・ウィットネス・トゥー・イスラエル(CWI)の働きや、韓国のユダヤ人伝道団体による多角的な活動が積極的に展開されていることなど、各国熱気あふれるレポートが続いた。テルアビブ在住のメシアニックジューで、ユダヤ人伝道に尽力している夫妻は、多くの受洗者が起こされていることを報告し「イスラエルのために祈り続けてほしい。そして、皆さんのユダヤ人への愛を感謝します」と語った。
石井田氏は「世界でユダヤ人伝道に取り組む人々との関係作りができた3日間。これだけ真剣に話し合いができたことは、画期的だ。ユダヤ人伝道はイスラエルに行ってするものだと思っていたが、日本でユダヤ人伝道をすることができるのだということがよく分かった」と、意欲を新たにしていた。