2017年12月10日号 01面

 宣教困難な地や現代の多様な課題に宣教団体はどのように応えるか。日本の福音的な教会によって超教派で生み出された宣教団体、アンテオケ宣教会が1977年の創立から40年を迎えた。この創立記念集会が11月23日、東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで開かれた。宣教師からの報告やオープンフォーラムでは、宣教師、運営、支える教会、それぞれの視点からこれからの宣教の在り方が議論された。【高橋良知

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 インドネシア語、モンゴル語、スペイン語…で「全世界に出て生き、すべての造られた者に、福音を宣べ伝えなさい」。アンテオケ宣教会40周年の感謝会では、各宣教地の言語でマルコ16章15節が読み上げられた。読んだのは各宣教師たち。

 同会では、40年間で約20か国に、のべ70人以上を派遣してきた。理事長の中見透氏(御殿場純福音キリスト教会牧師、アルゼンチン宣教を支える会代表)は、「世界宣教は神様の願い。すべての人が福音を聞くことを望まれている。そのためにすべての教会が協力して宣教師を遣わす」と世界宣教の意義を強調した。

  「世界で不規則な変化が起きている」と言う。「宗教的思想の先鋭化、思想、イデオロギーの揺らぎが。キリスト教の宣教団体から派遣されたと分かると、捕縛される場所もある。様々な方法が宣教には必要だ。まだまだ世界には福音を聞いたことがない人たちがいる。教会と宣教団体、宣教師が協力して道が開かれるように祈りたい」

 宣教師の高齢化、減少にも触れ、「経済領域の課題がある。しかし主が全世界のすべての人にイエスを知らせるという熱い思い、祈りにささえられ、互いに協力し合い進めていきたい」とした。

   「人が大事」とも強調。「宣教師を支える会の人たちにも伝えられない課題を抱える場合もある。宣教師からの祈りの要請に応え、必要があれば飛んでいき、いっしょに時間を過ごしていきたい」と述べた。

 アルゼンチン派遣の在原繁氏は教会形成、教会再建、家庭集会などでの奉仕を巡回して進める。「現地の人が入れないところに入り、形ができたら現地の人に渡す」と自身の姿勢を述べた。「収穫は多いが働き人が少ないことが悩み。神の声を聞いた働き人を期待する」と語った。

 高橋真一氏は、日本の教会を牧会しながら、モンゴルの教会を巡回する。「モンゴルは遊牧の国なので一か所にとどまることは尊ばれない。日本から通うことで敬意を払われた。神様はどのような方法も用いる」と話した。

 別の宣教師は、民間宗教の

しばりがある地域で、住民と友好な関係を築いている。「相手の信仰について、対決型ではなく、学び、尊ぶ姿勢で向き合った。教えてほしい、知りたいという姿勢は、相手にとってもうれしいこと。民間宗教の戒律と現実の葛藤の中で、恵みの必要を知り、イエス様を信じる人も複数起きています」

 オープンフォーラムでは、大田裕作氏(アンテオケ宣教会主事、関西聖書学院学院長、元インドネシア宣教師)が司会で、石川秀和(近江聖書教会牧師、元東欧宣教師)、高橋めぐみ(インドネシア宣教師)、中見、三橋恵理哉(アンテオケ宣教会主事、札幌キリスト福音館牧師、元ハワイ宣教師)の各氏が立った。

 石川氏は、「団体どうしで互いに無関心になっていないか。共通の課題があれば、横のつながりを持ちたい」と語った。自らも中東や北朝鮮についてネットワークを広げていると述べた。「超教派として立てられたアンテオケ宣教会が役割があるのではないか」と勧めた。質疑応答の中では「1匹の羊が救われても、どこかで10匹が盗まれるといこともある。しっかり情報網を構築しないと孤軍奮闘になる」と注意した。

 高橋氏は、同会初代のインドネシア宣教師だった安海靖郎氏の立ち上げたATI神学校を担ってきた。「現地の奥地伝道に人材を送る。そのために励まし、マネジメントする人が必要」と言う。「上から教えるのではなく、いっしょに育てられることが大切。奥地の部族宣教は何もわからないところから祈って始めて行き、伝道の拠点をつくっていきます」

 中見氏は、自身が牧会する教会で伝道師だった在原氏をアルゼンチンに送った。「当初は、教会で用いられた賜物を送る戸惑いがあった」と明かす。

「そもそも同教会はスウェーデンの宣教師がたて、路傍伝道、子供伝道、天幕伝道で始まった。宣教の炎があった教会だった。宣教は主が責任をもつと信じるようになった」と話した。

  「パッションをもつ人に触れると、そこから火がつく」と語り、「教会こそ宣教そのもの。教会といっしょに宣教へ出かけて行くことが大事」と語った。

 三橋氏は、従来の宣教が個人の救いに焦点に当てていたことを指摘。「聖書自身は福音を包括的にとらえていたのではないか。個人と群れは切り離されない。神の国をもう一度捉え直したい」と述べ、「神を中心に、神と人とがいっしょに暮らす。神の家族として神の計画を進めること」を勧めた。

  「母国を離れ、暮らしている宣教師と橋をかけるのが宣教団体の働き。宣教師と現地の人、母教会、支える会、さらに母教会以外の諸教会とつながっていきたい」

 課題は、宣教師という名前では暮らせない地域があること。「宣教師との相談やセキュリティーの助言をするコンサルティングのような関わり方があるのではないか。また語学や何か役に立つことで貢献する技術宣教師という在り方も必要」と述べた。

 大田氏も、「宣教師が語学教師などになるなどで、『もうサポートしなくていいんですね』と教会がとらえてしまうことも現実的におきている。宣教師として入っていけないところにこそ、働きが求められる。彼らをどのように支えるか、教会を啓発できるかは大切」と語った。