福音版3月号:今月のひと ─りじょいすらいふ代表 児玉須美恵 さん 西日本ドリパージュⓇ協会公認インストラクター
神様に全部おまかせしたらいい
「苦しんでいる人に、自分が伝えられる方法で神様を伝えたい」
兵庫県加古川市発祥のクラフト「ドリパージュ」。様々な柄のペーパーナプキンを雑貨や家具などに貼り付けて美しく彩る技法で、加古川市在住の蓑田正代さん(西日本ドリパージュⓇ協会会長)が考案した。二〇一三年に特許庁で認められて登録商標となっている。同市の「りじょいすらいふ」代表で加古川恵キリスト教会員の児玉須美恵さんは、現在三人しかいない協会公認インストラクターのうちの第一号取得者。言わば蓑田さんの一番弟子だ。作品作りや展示会、ワークショップなどを展開すると同時に、七年前に取った整理収納アドバイザーの資格を生かして家の整理や掃除、家事手伝いを請け負う仕事をしながら「苦しんでいる人に、自分が伝えられる方法で神様を伝えたい」と、尽力している。
古い雑貨が世界で一つの物に蘇る
ドリパージュで使用する絵柄はペーパーナプキンのみ。国産から外国製まで絵柄は無限にあり、美しい物が多い。三層のナプキンの一番上の部分を使って貼り付ける繊細な工程を経ると、古びた家具や家電は花や動物や異国の風景を装った、世界に一つの物に蘇る。貼り付けた部分はなめらかで、まるで描いたかプリントしたかのような自然な仕上がりだ。「壁や洗面台でもできます。マカロニやTシャツでも」。小さな雑貨はもちろん、部屋のリフォームにも応用できるのがドリパージュだ。
整理収納アドバイザーとして仕事をしていた児玉さんは、片付けの際に出てくる不要の雑貨や家具を、何とか再利用できないかと考えた。ドリパージュの体験教室で「石鹸一個作ってはまり」、蓑田さんの協会設立と同時に資格を取得した。
苦しみの中ドリパージュがあって良かった
「蓑田さんはいつも周りの人たちの幸せを願っている方です。蓑田さんのところにはいろんな悩みを持った人がたくさん集まっていて、ドリパージュがあって良かった! と感じている人が多いんです。私もその一人。これを始めようと思ったのはとてもしんどいときで、ああ、これがあれば頑張れると思ったのを覚えています」
児玉さんは二度目の結婚で大きな借金を背負ってしまった。最初の結婚は五年で破たん。長女の桃子さんを連れて実家に帰って働いていたときに知り合った人と、周囲の反対を押し切って再婚した。母や親戚とは絶縁状態となった。後で考えればこれも、人に頼れず神を求めて教会に行くきっかけになったと振り返る。
再婚後さらに二人の娘菜々子さん、梨々子さんが生まれた。夫は分け隔てなく子どもを可愛がる明るい人だったが、自営業で借金を重ねるその日暮らし。借金取りが家に押し掛けるようになっていた。
まだキリスト教会と無縁の頃、神戸教会の千野恵津美さんの家を借りて仕事をしていたことがある。教会の人たちが集まってお祈りをする場に、児玉さんも誘われて参加するようになった。「祈りましょう」と言われて、恥ずかしかったけれども不思議に心が温められた。そのうち、むしろ「祈ってほしい」と思うようになった。悩みが蓄積していた。
「すごく暗い顔をしていたらしくて、千野さんに教会に行ってごらんと言われたのですが、なかなか行くきっかけがなくて。行ってどうなるという思いもありました。そのうち夫は追い詰められ、身体も動かないほど精神的に打ちのめされてしまいました。私の力ではどうしようもなくなりました。子どもを保育園に送って行くとき、あまりのつらさに涙が溢れてきたのを覚えています」
重荷を負う者に「休ませてあげる」の招き
そんなとき、状況を知った千野さんからお金を同封した手紙が届いたのを機に、すがりつくように教会を訪ねていた。新約聖書のマタイの福音書一一章二八節「すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます」ということばを聞いたとき、イエス・キリストが見えたような気がした。二〇〇七年に洗礼を受けた。
やがて行政書士の助言を得て借金問題解決の曙光が見えてきた。やっと普通に暮らせると思えるようになった矢先に、夫はまたしてもお金を借りて事業を始める。朝夕借金取りが押し掛け、子どもたちが怯えるほどになり、児玉さんはこう祈った。
「神様、夫との関係を含めて家族をどうしたらよいのか、最善の道を示してください」
そして、神様は一番良い形で解決してくださったと確信している。
「今、子どもたちはみんな洗礼を受けて、すがるべき存在を知っています。夫と子どもたちは程良い距離で交流があり、私は夫の両親ともいい関係です。暖かいところでご飯が食べられて、電気も止まらへんのは本当に幸せ。憎んだり恨んだりゆるせなかったりしなくてすむのは、やはり神様を知っているからだと思います」
夢は日本中の教会を回ってドリパージュを知ってもらい、たくさんの人が教会に足を運ぶきっかけを作りたいということだ。 「何があっても神様に全部おまかせしてたらいいんやというところにいるから、笑っていられます。失敗しても失敗じゃない。絶対この先に最善を用意してくださってると思うとワクワクします。しんどいけど楽です。いろんな悩みを聞いていたら、『教会に行ってみ、どんなに楽になるか』と言ってあげたくなります。大変なことは誰にでもあるけれど、神様はちゃんと逃れる道を用意してくださってるんですから」