2018年09月30日号 06面

2010年から5年間阪神タイガースで活躍した米・クリスチャン選手のマット・マートンさんが、8月と9月の台風20号、21号で被害を受けた兵庫県西宮市のアッセンブリー・西宮アガペー教会(姜一成牧師)を9月17日に訪問して被災地を励ました。これまで日本を、特に関西を愛してきたマートンさんは、今年日本を次々と襲った豪雨災害や台風、震災などに心を痛めていたという。今回「何か役に立つことがあれば、何でもお手伝いします」と、懐かしい甲子園球場のある西宮の被災教会を見舞い、駆け付けたファンと交流を楽しんだ。

「マートン選手が来てくれる!」。この知らせを聞きつけた大勢の地元の人やファンが、教会に詰めかけた。マートンさんはまず日本語で「こんにちは。久しぶりですね」と、あいさつ。「西宮は私と家族にとって大きな意味のある場所。家族が成長していくのに力を与えてくれた町です。台風や地震のニュースを知って、私に何ができるか考え、まず行動することだと思い日本に来ました」と、語った。
教会は8月に発生した台風20号で会堂1階の多目的ホールが床上41㎝もの浸水被害を受けた。信徒らの協力で泥水などをかき出してほっとしていた矢先の9月4日、近畿に甚大な被害をもたらした台風21号が襲来、会堂脇の防波堤を乗り越えた高波によって、1階は再び2・5mもの高さの水に浸かってしまった。幸い人的被害はなかったが、事務室も浸水して電気製品は損壊、書籍の大半も失った。IMG_2949あそこまで水が‥‥姜牧師の説明を聞くマートン氏
壁に水の跡が残る1階で、集まった人たちを前にマートンさんは「勝利するということと苦闘するということについてお話ししたいと思います」と、語りかけた。
「私たちは一人一人困難を経験することがあります。今回の関西地区の皆さんのように。私も野球人として様々な困難にぶつかりました。シカゴ・カブスでプレーしていたとき、努力しても十分な結果が出せなくて苦しんでいたとき、車の中で涙が出てきたのを覚えています。“主よ、どうしたらいいのですか”と、祈りました。そんな中で神様が計画してくださっていたのが、日本で野球をするということだったのです」
「私は日本で日本人の忍耐力を教えられました。忍耐するためには何かに打ち勝たないといけない。この地域で経験した困難を、乗り越えて行かなければなりません。テニスの大坂なおみさんの優勝の背後には、お父さんに教わった忍耐と自らをコントロールする自制心があったといいます。私の父もいっしょに野球をしてくれました。父と共に、私の信じている神様がおられることが大きい。神様は私たちを愛しておられる。私たちの将来をご存知で、その行く道において、いかに犠牲を払うかもご存知です。神様はその道を導いてくださる。私は困難に遭いましたが、神様のご計画の先にある結果を信じてやってきました」
IMG_2966教会関係者、ファンら参加者と。
「私がここに帰って来たのは、皆さんへの感謝と共に、自分の経験を通して何とか励ましを届けたいと思ったからです。私たちの周りに困難に遭っている人がいたら、その人たちのために小さなことでも行動に移そうではありませんか」
最後に「日本で楽しかったことはとよく聞かれます。印象深いのは2014年にジャイアンツに勝ったこと。あのときグラウンドからタイガースファミリーを見まわして、力を合わせて勝てた感動をかみしめていました」と、振り返った。
交流会は長蛇の列。マートンさんは一人一人に温かく声をかけ、握手に応じていた。
教会は今も復旧作業が、教会や教団の信徒らの協力で進められている。姜牧師夫人で教育主事の趙善江さんは「失ったものは大きいですが、共に苦難を共有する仲間として、教会や教団の皆さんとのきずなが深まったと感じています。たくさんの方が駆け付けてくださり励ましてくださいます」と、感謝していた。教会は開拓20年。苦難を乗り越えて、さらに宣教の教会を目指して進んでいる。