1月27日号紙面:震災の向こうに愛が見える 阪神淡路大震災祈念コンサートで 森祐理さん
2019年01月27日号 06面
阪神淡路大震災から24年。被災地の神戸市兵庫区にある日本ナザレン教団・神戸平野教会(水城秀明牧師)で、1月13日に福音歌手の森祐理さんを迎え、震災祈念コンサートを開いて当時を振り返り、犠牲者を追悼した。この日教会では震災祈念礼拝が捧げられ、午後のコンサートに教会員や震災を体験した近隣の人たちが集った。毎年1月17日の午前5時半から行っている「1・17追悼キャンドルライトinHirano」では、地域の人々と共にキャンドルを灯し、地震の起こった午前5時46分に黙祷を捧げた。
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森さんは阪神淡路大震災で犠牲になった6千434人の遺族の一人だ。神戸大学4年生だった弟の渉さんを亡くした。今、日本はもちろん、世界の被災地や貧困の地を訪ねて、傷む人に「心の救援物資」を届ける福音歌手森さんのスタートは、がれきの中に立ち尽くす神戸の人たちの前で歌った、にわか作りの台の上から始まった。渉さんが背中を押してくれたのだと、森さんは確信している。
コンサートでは「泣いたらだめだよという弟の声を聞き、被災地に立ちました。悲しみを歌と祈りが支えてくれました」と、映像で当時を振り返りながら、さまざまな思いを歌に託した。
「当時絶対に歌えない歌がありました」と語ったのは「思い出のアルバム」。「あんなことこんなこと」を思い出すのがつらい人々が多過ぎた。「この歌を歌ってと言われるようになったのは10年くらいたってから。人々の心が変わっていったのでしょう」と、感じている。森さんの人生のテーマソングともいえる「歌いつつ歩まん」、渉さんの葬儀で歌った「遠き国や」等、一つ一つの歌に、震災の向こうに見える神の愛を表わした。
東日本大震災の被災地でのコンサートは130回を数える。森さんは被災地の牧師から届いた手紙を紹介した。
「まさか人生の中で祈れない時が起ころうとは…。祈ろうとしてもことばが出てこない。ただ、とめどなく涙が流れる。しかし、自分の代わりにイエスが祈ってくれているとわかった。神の存在がもう一度わかった」
キリストは愛ゆえに、この震災さえ意味があると、森さんは語り、東北の避難所で被災者と共に歌った「ふるさと」を歌い、会場が唱和した。神戸の震災から生まれた「しあわせ運べるように」も、すぐに参加者の声が重なった。映像には東日本大震災の津波で流された教会跡地に建つ流木の十字架。森さんは「私たちには天のふるさとがあります。地上を終えて帰る永遠のふるさとが。皆さんに十字架による永遠のいのちを知ってほしい、イエス様が共に生きてくださることを知ってほしいのです」と、力強く呼びかけた。
水城牧師は「傷付いた心を温かく覆ってもらったような時間でした。24年前を思い、共に過ごせたことを感謝します。年月を経て風化していく中で、これからも被災者のために祈り続け、語り続け、伝え続けていきたいです」と、話していた。