「クリスチャンITキャンプ」開催 アイデアとスキルを教会へ

写真=自由にアイデアを出し合う

「ホームページの更新が止まっている」「ネット上に誤ったキリスト教情報が流通している」…目まぐるしいITの変化に教会は追いつけるだろうか。  情報伝達方法、人間関係のつくり方、さらに生命観も変わってきている。スキルをもったクリスチャンの献身が急務だ。キリスト者学生会(KGK)では、卒業生会のつながりで職域別祈祷会を催している。そのIT部門が中心となり、「KGK全国クリスチャンITキャンプ」を4月28、29日に東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催した。KGK卒業生のみならず各地からIT系、デザイン系、ブロガー、起業家、情報発信にかかわる人などが集い、課題を共有し、交流を深めた。【高橋良知】

 キャンプ冒頭では、準備委員で、IT企業に6年勤めた経験がある天野秀亮さんが、ITをめぐる日本のキリスト教会の課題を挙げた。

 あるキリスト教系異端のポータルサイトを紹介。親しみやすいデザインで、用語集などが充実していた。「何かキリスト教用語をググる(検索する)と、このようなサイトに入ってしまう」

 天野さん自身が、中学生時代、教会やクリスチャンのつながりがない中で、インターネットのサイトを通して、イエス・キリストを信じたことから、「正しい福音が広がってほしい」と語った。

 さらに、IT系のクリスチャンのコミュニティーが圧倒的に少ない、専門が細分化されているため教会で普及させにくい、IT系のクリスチャンが目の前の仕事や生活のことで精いっぱい、という課題を確認した。

 続いて「ライトニングトーク」(短いプレゼンテーション)として、ウェブデザインに携わる塚田真琴子さんと、はこぶね便など多様な事業に取り組む上原雄平さんの2人がトーク。塚田さんは「デザインは問題解決の手段。アートは表現そのものが目的だが、デザインはコミュニケーションを成立させることが目的。相手の立場に立った上で伝えられているか」と問うた。創世記1章31節を引用して「神にとって良いものは、コミュニケーションをとる相手である人間にとっても良いもの。良い被造物を見て、神がどのような方かを知り、広い意味で愛に根ざしたデザイン(コミュニケーション)がどのようなものか。そのことを、このキャンプを通して考える良い機会になれば」と励ました。

 上原さんは、教会の働きにおいて、ITの導入が遅れている問題について、「教会としても、何から手をつけたらいいのか分からない場合が多い。技術者も個人で対応できないケースもある。チームで取り組むことで可能性が広がる。ホームページ1ページという対応だけではなく、チームでやれば、もっとウェブ展開を考えられる」と期待した。

 元ITベンチャー社長・現大野キリスト教会牧師の中村宏章さんは、「縮まる世界、広げる世界」と題してメッセージ。

 冒頭では幼少、神学校、起業の歩みを振り返り、ゆがんだ自尊心に気づかされた経験を語った。

 詩篇127篇を引用し、「クリスチャンがあきらめるならば、神様が望まない方へ世界はどんどん加速してしまう。テクノロジーの世界にもクリスチャンがかかわり、神の国へ軌道修正し、神様の望むスピードに調整したい。一人だけではなく、つながることで、共に神の国を建て上げていきたい」と励ました。

グループでアイデアを実践

写真=アイデアソンの発表

 2日目午前の分科会は教会ホームページ改善を株式会社ダニエルズアークの大原昌人さん、映像編集法をコンテンツディレクターの中村恵久さん、ブログ、SNS活用法についてフォトグラファー、ブロガーの松山歓己さんが担当した。それぞれ失敗例や成功例を示しながら、技術、ツールを紹介。グループや個人に分かれ、ウェブのデザインやブログ文章作成、映像撮影・編集をするなど実践的な内容だった。

 午後は制限時間内でアイデアをかたちにする「アイデアソン」を実施した。「ノンクリスチャンの人に教会に来てもらうためにITで出来ることって何だろう」というテーマで、グループで課題の洗い出し(15分)→個人でのアイデア出し(5分)→グループで共有し、アイデアをまとめる(60分)という手順で進めた。付箋を使ったり、「『無理』『できない』は言わない」など、発想を活性化させる工夫をした。

 以下は各グループのアイデア。
▽A「Church Lab=デジタルアートの世界で活躍するアーティスト集団チームラボのように、プロジェクションマッピング(立体的なデジタル映像を投影する)を用いて、複数の教会を巡回し、十字架のストーリーを上映していく
▽B「はじめて教会アプリ」=教会案内のアプリ。予約ができ、利用者も教会も安心。当日は「教会コンシェルジェ」が案内する。(実際のアプリの画像イメージをパソコンで表示した)
▽C「ひふみんのアバター教会少しキリスト教に興味をもった人が将来的に教会につながるきっかけとなるためのコンテンツ。元棋士でキリスト教信者のひふみん(加藤一二三さん)にちなんだ「仮想ひふみん」が動画で語る。「自殺したい」「仕事やめたい」などSNS上でネガティブな発言をして悩んでいる人をターゲットにする
▽D「バーチャルYoutuber」Vtuberなどとして知られる、バーチャルキャラクターを使った動画配信。クリスチャンの中で、発信力がある人たち(インフルエンサー)に活用してもらい、逆にインフルエンサーにまつわるもの(上馬キリスト教会のツイッターなど)を動画で紹介▽E「クリスチャンWiKi」ネット上に散在するクリスチャン情報を集め、ウェブ百科事典ウィキペディアのような、まとめサイトをつくる。クリスチャンがつながり、ちゃんとした価値観を伝えたい。クリスチャンでも教会で質問しづらいことなどをまとめたい
▽F「あたたかいコミュニティーをつくる」様々な方法を用い、ITを入口にして、最終的にあたたかいコミュニティーを目指す。教会堂を使ったコワーキングスペース、カフェ、温泉施設など。特に地方の教会を古民家改装のように活用し、ITクリスチャンを派遣して活性化していく
▽G「クリスチャンのリアルな生態」献金はどのくらいが相場か、どのように使うかをドキュメンタリーで紹介。「しゃべり場」のような動画を作り、クリスチャンの本音、失敗談などを話して、身近に感じてもらう
▽H「プレプレ(仮)」悩みを投稿すると、祈ってもらえるSNSアプリ。投稿に対して祈りの数が表示される。祈りを身近に体験してもらい、キリスト教に興味をもってもらう。祈り方のレクチャーがあり、クリスチャンでない人も祈りを学べる。