指先で触れる主のことば輝いて 点字で福音を伝えて50年 福音点字情報センター

<伝道団体シリーズ>「福音点字情報センター」

「日本の視覚障害者人口約30万人」と、よく言われる。しかしこれは厚生労働省の調査による、視覚障害の身体障害者手帳所持者数に基づくものであって、日本眼科医会は2007年における日本国内の視覚障害者の人口を約164万人(ロービジョン145万人、失明者19万人※)と推定している。視覚に障害を持つために、通常の文字によって福音に接することが困難な人たちに神様のみことばを届ける|いのちのことば社「福音点字情報センター」(影山範文協力委員長)は、1973年以来、その働きに取り組んできた。普段あまり目にすることのない、福音宣教の働きを紹介する。
※「日本における視覚障害の社会的コスト」 (日本眼科医会研究班報告 2006~ 2008)

完成した「新約」全9巻

ボランティアによって支えられる点訳

聖書をはじめとして、信仰書籍、定期刊行物など、私たちの周りに当たり前のようにある福音文書。しかしこれらは視覚障害の人たちは読むことができない。福音点字情報センターはその人たちに向けて、点字版、BES(ベス)版(点字用データ)、音声用図書データにより、神様のことばを提供している。
点字は、2×3=6個の突起の有る無しで1文字を表すもので、日本では19世紀の末から導入されていた。最近では缶飲料や駅の手すりなどでも目にすることがある。BESは点字データの方式で、そのデータを専用の点字端末で表示させ、それを指を使って読み取る。また、音声で聞くこともできる。音声データは、基本的にテキストデータで、読み上げソフトを使って使用してもらう。
月刊誌では「百万人の福音」「マナ」「いのちのことば」「みことばの光」。これら毎月の点訳作業は、現在10人のボランティアスタッフによって担われている。毎月初めに各月刊誌のテキストデータが届くと、それを点訳ソフトを用いてデータを作成していくのだが、しかしボタンを押せばすべてが自動的に行われるわけではない。
一般的な点字には漢字がないため、漢字かな交じりの文章(これを、「点字」に対して、「墨字」の文章と呼ぶ)は、すべてかな文字の文章に点訳するが、それを点訳ソフトに行わせるためには、まずテキストデータを点字用に編集する必要がある。それを手作業で行って初めて、自動点訳ソフトで点字への変換が可能になる。ソフトが打ち出した点字は、元のテキストデータから正しく変換されているか、特に漢字の読みなど間違いがないか、チェックが欠かせない。これは通常の書籍編集と同様の校正作業である。これを二校、ある場合には三校と校正を重ねる。
聖書など特に注意を要するものでは、さらに対面校正(墨字を読む人と点字を読む人が向かい合って、どちらかが声を出して読みながら確認していく)をする。漢字のチェックだけでなく、点字はかな文字が連続する文章になるため、正しく読んで理解できるように、空白を入れる「分かち書き」というルールもある。それらを一つ一つチェックしていき、点訳作業は完成する。

                               点字ディスプレイを用いての対面校正の様子

福音の「光」を届けるために

今ではコンピューターの導入によって、時間も費用も大幅に節約できるようになった点訳作業だが、それ以前は足ふみ式の製版機などで、点字をほぼ手作業で打ち込んでいた。その時代に始まる、現在の福音点字情報センターの働きのルーツは、今から半世紀近く前に遡る。その歴史を、いのちのことば社社史から引用しよう。

いのちのことば社で、目の見えない人々の必要に応えるために最初に重荷をもったのは、EHC(全国家庭文書伝道協会)ディレクターの田中光さんだった。EHCは点字によるトラクトを作成し、それらを特別に開設した窓口を通して目の見えない人々に配布した。また多くの通信講座が点訳された。受講者への応答は、スタッフが愛を込めつつていねいに行った。彼らはこのために、点訳技術を習得したのだった。
その後、「百万人の福音」のスタッフが目の見えない人々に関心を向けるようになった。彼らは経済的な無理を押して、愛の奉仕によって特別編集版の雑誌を出版した。
そして1973年、いのちのことば社の独立した部門として、目の見えない人々への伝道を専門に行う、より大きい基盤をもった部門が創設された。これが盲人伝道部である。盲人伝道部の指揮をとった門屋昭平さんは、自身が視覚障害者で、視力がほとんどなかった。この働きは、書籍や賛美歌集、さらには聖書全体の点訳にまで拡張されていった。(『小さな種から—いのちのことば社50年の物語—』)

その働きは今日まで継承され、現在の福音点字情報センターとして受け継がれている。しかし、50年の歳月を経て点字需要そのものが下がってきていることも事実である。厚生労働省が2006年に行った調査では、視覚障害のある人のうち点字が読める人の割合を12・7%としている(「平成18年身体障害児・者実態調査結果」)が、いのちのことば社執行役員で福音点字情報センターを担当する相澤直実さんは次のように語る。
「視覚障害を持つ人のうち点字を利用する人の数は確かに減ってきています。医療の進歩で、以前なら生後間もなく失明せざるを得なかったケースが減少して、相対的に中途失明の方が増えてきています。大人になってから点字を習得するのは確かにハードルは高いですし、今はコンピューターによる〝読み上げソフト〟なども普及して、点字以外のコミュニケーションツールが使えるようになりましたから。それでも高齢の方などは機械の操作が難しい場合もありますし、点字を必要としている方はまだまだいらっしゃいます」
福音点字情報センターの近年の大プロジェクトは、何と言っても『聖書 新改訳2017』の点字翻訳作業であろう。17年10月の墨字版聖書の発行に先立ち、16年12月から点訳委員会を発足、18年4月には点字版『聖書 新改訳2017』新約(全9巻)が完成した。現在は旧約聖書の点訳が2020年の完成を目指して進められている。この新しい点字聖書が用いられ、必要としている人のところに届けられるため、相澤さんは次のように呼びかけている。
「点訳された聖書は墨字と同じ価格で販売していますが、実際にはその5倍の費用がかかります。昨年完成した新約聖書を100セット頒布するための献金をお願いしたところ、早速その必要が満たされました。皆様のご協力を心から感謝します。次は来年に向けて旧約聖書100セット頒布のために250万円の必要があります。点訳委員会のスタッフのために祈って支えていただくと同時に、その必要が満たされるようにおささげくだされば感謝です」

福音点字情報センター
Mail:mb@wlpm.or.jp
TEL:03-5341-6931
郵便振替:00100-9-61224
「福音点字情報センター」