(C)OPUS FILM Sp. z o.o. / Apocalypso Pictures Cold War Limited / MK Productions / ARTE France Cinema / The British Film Institute / Channel Four Televison Corporation / Canal+ Poland / EC1 Lodz / Mazowiecki Instytut Kultury / Instytucja Filmowa Silesia Film / Kino Świat / Wojewodzki Dom Kultury w Rzeszowie

第2次世界大戦終結から東西の冷戦が深まりゆく1960年代中ごろの時代に、ポーランドで出会ったミュージシャンとシンガーの互いに傷つけ合うほどに激しい男女の情念を描いた作品。ミュージシャンの男性はフランスに亡命しパリで暮らすが、ポーランドに残った女性は合法的な方法でパリにいる彼を追う。監督の両親の若い時代の出来事をモチーフに物語が構成されていることもあって、二人の感情と行動が行き交う時代背景が丁寧に描かれていて真実味に惹かれる。二人の出会いとそれぞれにパートナーを持ちながら国と情況を超えて離れられなくなる心の動きなど、その展開をすべて結び合わせていく音楽の素晴らしさが、美しい映像と共に印象的な作品。

【あらすじ】

第2次世界大戦が終結して東西“冷戦”が世界へ広がりつつある1949年のポーランド。国立マズレク舞踊団を立ち上げる準備として管理部長のカチマレク(ボリス・シィツ)、ピアニストで編曲家のヴィクトル(トマシュ・コット)、ダンス教師のイレーナ(アガタ・クレシャ)らが地方の村々を訪ね民族音楽を録音採譜し、養成所を開設のためオーディションを行ない歌唱力とダンスの才能のある少年少女たちを募集していた。ヴィクトルは、応募者のなかでひと際エネルギッシュな眼差しが印象的なズーラ(ヨアンナ・クーリク)の声に惹かれる。デュエットで歌唱テストに臨んだズーラに自由曲で独唱させるヴィクトル。だが、イレーナはセンスが都会的だとして賛成しない。カチマレクとイレーナは、ズーラが父親殺しで執行猶予中であることを知っていた。ヴィクトルは、ズーラに直接尋ねると、ズーラは平然と真相を語り、「私に興味があるのか、それとも私の才能にか?」と切り返す。

1951年、ワルシャワでマズレク舞踊団の初舞台が開演された。合唱でも演舞でもセンターを務めるズーラは輝いていた。公演が大成功を収め、カチマレクたちは大臣に呼び出され、最高指導者への賛歌を演目に加えるなら支援は惜しまないと条件を付ける。カチマレクがその条件を飲み支援の予算を得たが、民族芸能を芸術に高めることにこだわってきたイレーナは公演の途中で舞踊団を去った。

少し年齢差はあるが、ヴィクトルとズーラは激しい恋に落ちていた。ある日、ズーラはカチマレクにヴィクトルのことを密告していることを告白する。西側の音楽を聴くか、神を信じているかなど調べさせられているが、執行猶予中のズーラは命令に従うしかなかったという。そして「私は神が存在することを信じている」とヴィクトルに告げる。

舞踊団で歌姫になっていくズーラ(中央)。パリでの歌手活動での歌も、演じているヨアンナ・クリークの歌唱が素晴らしい。 (C)OPUS FILM Sp. z o.o. / Apocalypso Pictures Cold War Limited / MK Productions / ARTE France Cinema / The British Film Institute / Channel Four Televison Corporation / Canal+ Poland / EC1 Lodz / Mazowiecki Instytut Kultury / Instytucja Filmowa Silesia Film / Kino Świat / Wojewodzki Dom Kultury w Rzeszowie

1952年、マズレク舞踊団は東ベルリンでの公演を終えた。ミュージシャンとしてジャズなど西側の音楽を捨てきれないヴィクトルは、パリへの亡命を決意する。ズーラもいっしょに行くと約束したが、彼女は来なかった。2年後、パリで編曲や作曲の仕事をしながら、ジャズバンドのピアニストとして演奏していた。マズレク舞踊団のパリ公演で来ていたズーラと再会するヴィクトル。だが、彼女の亡命しない意志は固く、そのまま別れる二人。だが、再会したことでヴィクトルの想いは再燃し、翌年ユーゴスラヴィアへマズレク舞踊団の公演を訪れズーラと再会しようとするヴィクトル。しかし、カチマレクの通報で一幕目が終わるとユーゴスラヴィアの国家保安委員に連行される…。

【見どころ・エピソード】

パベウ・パブリコフスキ監督は、ズーラとヴィクトルの物語を部分的に両親の実話をもとに描いているという。ポーランドとパリ、それぞれにパートナーと暮らしながら、激しい関係に結び合わせられていく二人。パリでジャズユニットでピアノを弾きながら作曲・編曲活動をしているヴィクトルが、ズーラの歌唱力を二人のデイの曲「ふたつの心」をジャズアレンジでレコーディングし、人気を得ていく。自由社会での成功は必ずしもズーラの心に幸福な思いを得させなかった。揺れ動く二人の機微は不安定さを増幅させていく。ポーランドの片田舎に破壊されたまま残されている教会でズーラとヴィクトルが選択した決断は、激しい情念をしずめる唯一の方法だったのだろうか。神の前に進み出る決意ができたのなら、信頼して歩む道も見いだせたようにも思えるラブストーリーだった。 【遠山清一】

監督:パベウ・パブリコフスキ 2018年/ポーランド=イギリス=フランス/ポーランド語、フランス語、ドイツ語、ロシア語/88分/映倫:G/原題:Zimna wojna、英題:COLD WAR 配給:キノフィルムズ 2019年6月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。
公式サイト https://coldwar-movie.jp
Facebook https://business.facebook.com/coldwar.jp/

*AWARD*
2018年:第71回カンヌ国際映画祭監督賞(パヴェウ・パヴリコフスキ)受賞。ヨーロッパ映画賞最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀脚本賞・最優秀女優賞・最優秀編集賞ノミネート。 2019年:第33回全米撮影監督協会賞(ウカシュ・ジャル)受賞。第91回アカデミー賞監督賞・撮影賞・外国語映画賞ノミネートほか多数。