9月22日号紙面:9月は「創造の季節」 全教会規模で被造物ケア呼びかけ
9月は「創造の季節」 全教会規模で被造物ケア呼びかけ
聖書的、倫理的責任
海洋プラスチック汚染、気候変動など、深刻な環境破壊問題が国際社会で認識され、様々な取り組みが実践されている。そのような中、近年キリスト教会でも聖書と祈りを土台に、全世界規模で警鐘を鳴らすキャンペーン「創造の季節」(Season of Creation、9月1日から10月4日、https://seasonofcreation.org/ )が展開されている。この運営委員会には、カトリック、正教会、世界教会協議会(WCC)ほか、世界福音同盟(WEA)、ローザンヌ運動も関わっている。
従来からキリスト教関係団体でも環境保護に関する活動はあった。WEAでは、08年の世界総会で、「被造物管理のための声明」を承認。12年にはローザンヌ運動と協力しつつ「被造物管理タスクフォース」を設置し、情報源の共有、ネットワーク化を進めてきた。
「創造の季節」が大きく展開したのは、国連持続可能な開発目標(SDGs)開始やパリ国連気候変動会議のあった15年。この年、フランシスコ教皇は、
「環境的回心回勅『ラウダート・シ』」を発表。WEA担当者は、同回勅が聖書を反映し、神の被造物への管理責任を呼びかけている点を評価し、「持続可能な生き方へ協働することは聖書的、倫理的な責任」と述べた。WCC担当者も「気候問題は霊的、倫理的な課題」としている。以降「創造の季節」は全教会的な取り組みとして呼びかけられてきた。
テーマは「生物の網」
19年のテーマは「生物の網:神の祝福としての生物多様性」だ。「手引き」(celebration guide)では、聖書からの解説、祈り、連祷の実例、各情報源、実践の勧めなどが収録されている。
同テーマの趣旨は以下のようなものだ。−神は、人間を含む全生物を良いものとしてつくられた。その生物は網の目のように、複雑につながり、相互依存して生きている。人間は全生物の管理を神から託された存在である。「万物は御子によって造られ、御子のために造られ」(コロサイ人への手紙1章16節)た、と言う。このことは、生物を単に人間の生活のための「資源」としてみるのではなく、神の新創造の目的の中で、生物それぞれに価値を認めることになる。近年急速な環境破壊が起きており、被害は、貧しい人、周縁化された人々に及んでいる。同キャンペーンによって、創造の祝福、環境破壊への悔い改め、学び、啓発、対話、擁護をして、世界的な展開をめざしたい−「手引き」に収録される連祷の式文や期間中各週に割り当てた聖書朗読では創造を感謝し祝うとともに、大量消費などの貪欲を悔い改め、世界の問題に取り組むため、神の助けを請う。
地域社会でインパクト
具体的な取り組みでは、水の適切な使用や浄化、身の回りに生物が暮らせる余剰のスペースを設けること、植樹、二酸化炭素排出削減、使い捨てプラスチック容器の削減、森林破壊や絶滅危惧種について啓発すること、化石燃料使用への投資を減らすことなどを挙げ、多様な団体、キャンペーンを紹介している。
たとえば9月23〜29日には、国連気候行動サミットがあり、このサミットを前に「グローバル気候マーチ」が日本でも実施される。9月21日には、国際海岸クリーンアップデイがある。
環境問題は巨大なテーマであり、日頃の教会活動との距離を感じるかも知れない。省エネならば、節約にもなり、取り組みやすいが、手間がかかる環境配慮製品・食品の選択には、深い倫理への理解が必要とされるだろう。「創造の季節」では、幅広い教派で共有できる基本的な聖書理解を土台に実践を勧める。東日本大震災以降、一般社会においても環境配慮への関心は高まっている。倫理基盤と世界的ネットワークをもつキリスト教会は、これらの取り組みにおいて地域社会でインパクトをもてるだろう。入手できる情報は英文が多いが、まず祈りと聖書による黙想を深め、被造物世界で起きている破れに目をとめていきたい。